【初代ポケモン・赤】中二病ポケモンマスターへの道 ブログ小説③

観光気分で情報収集を続ける少年は、ポケモンスクール的な場所を訪れていた。一戸建ての部屋の中は、そこまで広くないフロアに机と椅子が置かれ、生徒は席に着き、ノートを広げる。教室の奥の壁に黒板があり、その傍らに立つ教師は「はい!黒板に書かれてる事 ちゃんと見て!」と檄を飛ばす。と、言ってもこの部屋を見る限り、教師一人に対して生徒が一人、マンツーマンで教育している。それに対して黒板は要らない気もするが、それよりも仕事として採算は取れているのか?それともこの少女の親から莫大な報酬金を頂いているのか!?そんな考えを巡らせながら、少女に気付かれぬ様にノートを覗き見る。『ポケモントレーナーの目標は各地のジムにいる 強いトレーナー8人集を倒すこと! 更にポケモンリーグ本部には……猛烈に強い! 四天王が君臨している!』なるほど……ここでトレーナーの目的を刷り込まれているのか!「あー!ノート見ちゃだめ!」その叫びに振り向いた少年を少女がガン見していた。「しまった!」っと我に返った少年は、知らず知らずの内に自分がノートをガン見していた事に気付き、白々しい真顔を作るが、もう手遅れだ。授業を邪魔されたことで、今にもチョークを投げてきそうな教師の真顔に対し、真顔で見つめ返した少年は、足早に、教室を去る。外へ出ると少年は、少女のノートに書いてあったジムとやらを探す。中央辺りの開けた場所から周りを見渡すと一際目立つ巨大な建物が目に飛び込んできた。その巨大な建物に、いったいどこの目立ちたがり屋が、これ見よがしに書いたのかと思うほどに大きく書かれたGYMの文字を見た少年は、自然と口を開け、呆気に捕らわれていた。気を取り直し、ジムのすぐ近くまで歩いてきた少年の視界に、段差が現れる。その段差は辺り一帯を仕切り、ジムに来るものを拒む様に、造られた姿に見える少年は、「遠くからは大きく書かれたGYMの文字で誘い、それに誘われて来た者を段差の仕切りによって拒む、なんてクレイジーなんだ…」と、若干苛立ちながら繋がる通路を探し、歩き出す。段差に沿って、しばらく歩いた少年に、遂にジムへと繋がっていそうな通路が現れる。やっとジムに辿り着けるという思いに、少年の歩みは自然と速くなる。「ういーっ!ひっく……待ちやがれ! わしの話を聞け!」傍らから聞こえてきた呼び掛けに歩みが止まる。ジムへの高ぶる気持ちで気付かなかったが、声のした方へと振り向くと通路に横たわる老人が寝そべりながら話し掛けてきていた。よく見ると顔は真っ赤に染まり、しゃっくりをしながら気持ち良さそうな表情を浮かべている。そう、紛れもなく飲んだくれである。昼間っから酔っ払う老人に無駄足を喰らった少年は、フルシカトで立ち去ろうとする。「……こら! 行くな!と言っとろーが!」と、言い放った老人は、酔っ払いとは思えないほど、勢い良く足技を掛けてくる!その傍らで放たれた足技に対し、後方へ勢い良く飛び上がった少年は、間一髪で足技をかわし、地面に着地する。向き直した視界の先で、横たわりながらも、鋭く見つめてくる老人の小さな瞳に、少年は、「なんてクレイジーなんだ…」と、改めて思う。「あらら じいちゃん! こんな所で寝ちゃって しょーがないわね!酔いが醒めるまで待つしかないわ」と、傍らに立ち、老人の介護をするお姉さんは呆れ顔で諦め、言い放つ。「しょーがないじゃなくて、何とかしてくれよ!そこ通れないんですけど…しかも、クレイジー」と、言うことも出来ず、少年は、苦笑いを浮かべる心の奥底に沸々と滾る苛立ちを隠しながらも、ひとまず、その場を後にする。行く当てを無くした少年に、あの言葉が蘇ってくる『便利な道具屋ですから トキワシティで ぜひ寄ってくださいね!…』「いやいや、あんな胡散臭い人物に惑わされてはダメだ」と、思い歩く少年の視界に看板を掲げる店が映る。看板には『フレンドリィショップ』と書かれている。間違いない、あの人物が言っていた店だ。「騙されるな!」そう自分に言い聞かせる気持ちとは逆に、怖いもの見たさに自然と伸びた足先が扉のセンサーに当たり、ドアが自動で開く。ウィーン…ドアが開く音と同時に威勢の良い掛け声が店内に響き渡る「いらっしゃいませっ!」その掛け声は店内を駆け巡り、遂に少年の耳へと届く。その大声に、ハッ!とした少年は我に返り、無意識の内に行われ、作り出されたこの状況を理解する。入るつもりのなかった店内へと目を向けると、レジからこちらをジーッと見つめる店長らしき人物と目が合ってしまう。その人物は入口に立つ少年に、ニカッと笑い、まだ見つめている。もう後戻りは出来ない。覚悟を決めた少年は、額からにじみ出る汗を手の甲で拭うと、得意の苦笑いを浮かべ、店内へとゆっくりと足を踏み入れる。「お!君はマサラタウンから来たんだね?」そう問いかけてくる店長に疑問を感じ、立ち止まる。何故この男は初めてこの店を訪れた自分にマサラタウンから来たのかを確認してくるのか、それとも店へと入ってきた人物一人一人にその事を確認しているのか?その時、少年の脳裏にあの出来事が浮かび上がってきた。いや違う、奴だ!奴に違いない!少年は、トキワシティへ来る途中に出会った胡散臭い人物の事をまた思い出していた。奴が、マサラタウンから来る自分の特徴を携帯電話で店長に連絡していたに違いない、でなければ、ああいう問いを掛けられるはずがない。あの男は、行き場をなくした自分がここを訪れる事まで計算していたのか!『トキワシティで ぜひ寄ってくださいね!』その言葉が少年の脳裏をかすめる。「クソっ!ハメられた!」その思いに、自然と歪んだ表情で向き直した視界の先で、ニカッと笑い、手招きをする店長の姿が目に映り、怪しんでいる事がバレぬ様に一瞬の内に作り笑いを浮かべた少年は、恐れながらもレジの方へと歩みを進める。「オーキド博士を知ってるね?」レジで向き合う店長は、また問いを掛けてくる。「だとしたらなんだ?キサマに答える義理は無い」そんな言葉が少年の頭に浮かび、吐き出されようとした瀬戸際で呑み込まれ、気付くと少年は、首を縦に振っていた。そう、この行動で少年が、オーキド博士に対して何らかの形で知人である事を裏付ける証拠となってしまう。その行動の後で、ハッ!と、その事に気付く少年へ「これ 頼まれてるんだけど 渡してくれるかい!」とフレンドリィにニカッと笑い、後ろの棚から届け物を取り出す店長。「断る。届け物なら運送会社にでも頼むんだな」と、きっぱりと断る事は出来ず、少年は手渡された届け物を受け取ってしまう。面倒ごとを押し付けてきたにも関わらず、送料すらも支払わない事を、当たり前の様な平然とした顔に「送料無料か!」と、心の中でツッコミを入れた少年は、苛立ちを隠し、フレンドリィショップを後にする。まんまとハメられた気持ちの少年は、自然と作り出された、しかめっ面のままマサラタウンへと到着する。研究所の手動ドアを開き、中へと入った少年は、相変わらずイソイソと働く研究員達の姿を目にする。その奥にある自分の研究室から、こちらに気付き、「久しぶり」というような様子で笑顔を見せるオーキド博士に、リュックから出した届け物を携えた少年は、面倒ごとを押し付けられ、少し不機嫌そうな面持ちで、足早に近付いて行く。「おお!サトシ」先に話し掛けたのは、久しぶりの再会を喜ぶ博士だった。「どーだい? わしの やったポケモンは……」博士の問い掛けに、少年はヒトカゲをモンスターボールから出して見せる。「ほう……だいぶ なついた みたいだな?」屈み、ヒトカゲの様子を見ながら頭を撫でる博士は、傍らに立つ少年を見上げ、ニカッと笑う。「お前 ポケモントレーナーの才能があるな!」曇りなき眼で褒め微笑みかけてくる博士に、不機嫌だった少年は、急に恥ずかしくなり、必死に不機嫌顔を作り、平然を装おうするが、褒められた事の嬉しさで表情が少しニヤケ、作り出された違和感のある表情に、首を傾げる博士を目にし、ハッ!とし、我に返った少年は、自分が不機嫌になった原因の、手に握られていた届け物を思い出す。「……え わしに渡す物が?」また首を傾げる博士は、少年から手渡された届け物を開ける。「おお!これは わしが注文してた特性のモンスターボールじゃ どうも ありがとよ!」この言葉を聞き少年は、注文していた事を忘れ、運悪く店を訪れたマサラタウン出身の自分に、貧乏くじが回ってきた事を理解する。「爺さん!」研究所のドアが開かれると同時に聞こえてきた、後ろからの聞き慣れた声に振り向くと、やはりアイツが立っていた。近付いてきたライバルは、少年と目が合うと、相変わらずキザな態度で「なんだ。お前もいたのか」と言わんばかりの呆れた表情を浮かべ、目線を逸らすと博士と向き合う。「すっかり忘れてた!俺に何か用事だって?」その言葉を聞いた少年は、「物忘れは爺さん譲りか」と、心の中で呟く。「おお そうじゃ!お前たちに頼みがあるんじゃ」物忘れが日常となった博士の指差した先の、机の上に何かがある。「机の上にあるのは わしが作ったポケモン図鑑!見つけたポケモンのデータが自動的に書き込まれて ページが増えていくという 大変ハイテクな図鑑なのじゃ!」と自分の発明の偉大さを自慢げに語る。「サトシ シゲル これをお前たちに預ける!」その言葉を聞いた少年は、思わず目を見開く。タダで貸してもらえるハイテクな図鑑、博士の粋な計らいに、苛立っていた少年の心は喜びへと変わり、気付けば自然とニヤケていた。博士から手渡されたポケモン図鑑に少年は、満面の笑みを浮かべる。「この世界の全てのポケモンを記録した完璧な図鑑を作ること! それが わしの夢だった! しかし わしも もう爺! そこまでムリは出来ん!そこでお前たちには わしの代わりに夢を果たしてほしいのじゃ!」自分の夢を熱く語る博士には目もくれず、ハイテク図鑑をいじり出した二人に気付いた博士は、少し呆れた後、コホンと一回咳ばらいをし、二人を注目させる。「さぁ 二人とも さっそく出発してくれい! これはポケモンの歴史に残る偉大な仕事じゃー!」自分の胸の内を伝えきった達成感に酔いしれる博士の一声で壮大な冒険が幕を開ける。「よーし!爺さん!全部俺に任せなー!」と調子のいい孫が、そんなことを言い始める。「やれやれ始まった」と心の中で思った少年が隣に向き直すと、キザにニヤ付き、見下す様に横目で笑うライバルと視線が交わる。「サトシ! 残念だがお前の出番は 全くねーぜ!」その根拠のない証言に「やれやれ」と心の中で平然を装う少年だったが、表情には悔しさが滲み出てしまう。「そうだ!家の姉ちゃんからタウンマップ借りて行こう! サトシには貸さない様に姉ちゃんに言っておくから 俺ん家へ来ても無駄だからな!」と嫌味を言い残すと、キザにピースを投げ、去って行った。相変わらずの憎たらしさに、俄然負けん気が強まる。少年は博士にお礼を言うと、駆け出し、研究所を後にする。博士に思いを託された少年達の、それぞれの旅が始まる。

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