【初代ポケモン・赤】中二病ポケモンマスターへの道 ブログ小説②

マサラタウンから北に伸びる通路。草の生い茂る通路に、少年は改めて足を踏み入れる。念の為振り返ってみるが、マサラタウンから視線を感じることはなく、胸を撫で下ろし、歩き出す。ガサッ!目の前に生い茂る、少年の腰の高さぐらいまで伸びる草むらの先から聞こえた物音は、勢いよく少年に近ずいて来る!次の瞬間、草むらから飛び出してきた小さな影は、日の光に照らされ、実体を現す!「うわっ!」思わず声を上げてしまった少年の傍らで着地した小動物は、こちらに向き直す。振り向く少年の見下ろした先で威嚇する小動物と目が合う。それは二本の前歯が印象的な各地で見られる代表的なポケモン、コラッタだった。「デカっ!」神出鬼没なポケモンだが、実物を見るのは初めての少年は、無意識の内に、その言葉を発していた。だが、驚いている場合ではない。今にも飛び掛かってくる勢いの小動物、このままでは噛み付かれてしまいそうだ。「ポケモンにはポケモンだ!」気を取り直した少年は、モンスターボールに手を伸ばす。「ゆけっ!ヒトカゲ!」決めゼリフと共にポケモンが勢いよく飛び出してきた!目の前に現れたヒトカゲに、小動物の威嚇の標的が変わる。前歯をむき出しにしたコラッタは、勢い良く駆け出してくる。危険を顧みず身体ごと突っ込んでくる小動物に、少年の掛け声と共にかわそうと動き出した赤い身体の傍らを通り過ぎた小動物は、そのままの勢いで目の前に生い茂る草むらへと身を潜める。振り向くヒトカゲの周りで、草むらが、あちらこちらで音を立てる。それはまるで、大勢の小動物に囲まれてしまった様な感覚だ。相手の正確な位置が掴めない少年は焦る気持ちに表情を曇らせる。草むらを自由に駆け回るコラッタにとって、ここは庭の様な物、足を踏み入れる侵入者は、まさに袋のネズミ!完全な相手のペースに、焦る気持ちを落ち着かせながら少年は、音のする方向に耳を傾ける。徐々に迫ってくる背後からの物音に、「後ろだ!」少年の掛け声に、素早く反応した振り向くヒトカゲの視界の先で、草むらから狙いを付け、勢い良く小動物が飛び出して来た!次の瞬間、全力で飛び込んできたコラッタをギリギリまで引き付けたヒトカゲの片腕から放たれた引っ搔く攻撃は、カウンターを喰らわす様に飛び込んできた身体に命中し、勢い良く引っ掻き飛ばした!コラッタの身体は、弾き飛ばされた先で草のかたまりに当たり、落ちた地面で目を回し仰向けに倒れる。さっきまでの劣勢とは嘘の様な、あっけなさにポカンとした顔でヒトカゲと顔を見合わせる。その後再び、コラッタに向き直した視界に、起き上がった小動物の後ろ姿があった。「あっ!」という間に視界から消えたコラッタは、草むらに吸い込まれる様に逃げ去って行った。しばらく草むらを搔き分け進んだ先で、開けた場所へと辿り着いた少年は、妙な人物を見つけてしまう。立ち並ぶ木々に顔を付け、通路側に立つ少年に背を向けて立っている人物はこちらを向くことはない。無視して立ち去ってもいいが、どうにも気になってしまった少年は、しびれを切らし、話しかけてしまう。すると、「待っていました!」と言わんばかりに勢い良く振り返った怪しい男は、ニカッと笑い、「私フレンドリィショップの定員です」と自分が怪しい者ではないと、疑われてもいないのに身の潔白を証明する様に聞かれてもいないことをフレンドリィに喋り出した姿を見て、少年の身体は自然と後ずさっていた。「便利な道具屋ですから トキワシティで ぜひ寄ってくださいね! そうだ!見本を差し上げましょう……どうぞ!」とギラギラと輝かせた視線の先で、力強く握らされた『きずぐすり』に、「いや、知らない人から物をもらったらいけないって親に言われてるんで」と言う事も出来ず、得意の苦笑いを浮かべ、軽くお辞儀をすると、それをリュックにしまう。しばらく歩き、振り返ると、また木々に顔を付け、獲物を待ち伏せる様に佇む男の姿に、少年は身震いし、足早に立ち去る。歩き進む先に見えてきた大きな木の下で休憩をとる事にした少年は、リュックを降ろすと大きな木に背もたれる。バサバサッ!大きな音を立て、大木の上から、いきなり降りてくる翼をもつ生き物は、少年のすぐそばに降りてきた。それに驚き、声を上げた少年に振り向いた小動物は、各地で目撃される代表的な鳥ポケモン、ポッポだった。このポケモンは大人しく、戦いを好まない事で知られていて、少年の前に降りてきた、このポッポも気にした様子もなく平然と佇んでいた。「今がチャンス!」そう思った少年は、モンスターボールに手を伸ばす。その時だった、少年の張り切った表情で気付いたのか、目の前に佇んでいたポッポは勢い良く空中へ飛び上がると、少年の頭上を通り過ぎ、飛び去って行く。「くそぉ~!」そう叫び、じだんだする少年の頭部に、ポトッ!…何かが落ちてきた。帽子を脱ぎ、確認する少年の表情は一瞬にして凍りつく。そこには、お気に入りの帽子の、ど真ん中にへばり付いたポッポの糞があった。「く、糞ぉ…」無意識の内に呟いていた、おやじギャグに気付き、更にテンションが下がる。休憩を終え、北へと進む少年の視界に木々に囲まれたトキワシティが見えてきた。しばらく進み、トキワシティへと辿り着いた少年は、半分観光気分で、取りあえず目の前にある建物へと足を運ぶ。ウィーン… 扉の目の前に立った少年を、受け入れる様に自動で開かれた扉を見て驚く。当然、田舎のマサラタウンに自動ドアはなく初めて見る少年の頭の中に「科学の力って すげー!」と言っていた住民の姿が浮かんで消えた。中へ入ると広々としたフロアにテーブルと椅子が並べられ、休憩を取る人の他、カウンターでポケモンの入ったモンスターボールを預ける人などが見受けられる。どうやらここが、ポケモンセンターの様だ。詳しくは知らないが、預けたポケモンが元気になって返ってくるポケモン専門の病院みたいなものらしい。カウンターに向かい、歩き出した少年の耳に、近くでくつろぐ人達の話し声が聞こえてきた。「ポケモンセンターは、この先どこの町に行ってもある!何匹預けてもタダだし こまめに使うといいよ!」何匹預けてもタダ!?しかも、ほぼ全国展開だと!?どこの石油王、いや、カジノ王が、何の目的で無償の施設を建てたのか?しかもそれを、ほぼ全国展開するとは…自分には想像もつかない事が行われている事に思わず立ち尽くしてしまう。「次の方、どうぞ」カウンターから話し掛けてくる女医さんの声を聞いた少年は、先程まで膨らませていた考えを全て忘れ、頭に残ったタダという言葉で、カウンターまで全力疾走し、ニヤついた顔でヒトカゲの入ったモンスターボールを勢い良く差し出す。その姿に一瞬怯んだ女医さんが改めて話し掛けてきた。「ようこそ!ポケモンセンターへ ここではポケモンの体力を回復致します モンスターボールを お預けになりますか?」その問いかけに対し、YESしか頭にない少年は、満面の笑みを浮かべ、大きく頷く。変な奴が来たという様な思いを隠そうとする様な表情にも見えた女医さんは「それでは預からせて頂きます!」とモンスターボールを預かると、機械の上に並べ、スイッチを入れる。すると、ほんの数秒で動き出した機械は停止し、ヒトカゲの入ったモンスターボールを手渡される。「お待ちどうさまでした!お預かりしたポケモンは みんな元気になりましたよ!またのご利用を お待ちしてます!」早過ぎる返納に驚き、頭を下げる女医さんにお辞儀をした少年は、施設の外へ出ると、ヒトカゲを出してみる。出てきたヒトカゲのすっかり元気になった姿を見て少年は、目の前の神施設のありがたさに手を合わせ、崇める。

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