【初代ポケモン・赤】中二病ポケモンマスターへの道 ブログ小説③

観光気分で情報収集を続ける少年は、ポケモンスクール的な場所を訪れていた。一戸建ての部屋の中は、そこまで広くないフロアに机と椅子が置かれ、生徒は席に着き、ノートを広げる。教室の奥の壁に黒板があり、その傍らに立つ教師は「はい!黒板に書かれてる事 ちゃんと見て!」と檄を飛ばす。と、言ってもこの部屋を見る限り、教師一人に対して生徒が一人、マンツーマンで教育している。それに対して黒板は要らない気もするが、それよりも仕事として採算は取れているのか?それともこの少女の親から莫大な報酬金を頂いているのか!?そんな考えを巡らせながら、少女に気付かれぬ様にノートを覗き見る。『ポケモントレーナーの目標は各地のジムにいる 強いトレーナー8人集を倒すこと! 更にポケモンリーグ本部には……猛烈に強い! 四天王が君臨している!』なるほど……ここでトレーナーの目的を刷り込まれているのか!「あー!ノート見ちゃだめ!」その叫びに振り向いた少年を少女がガン見していた。「しまった!」っと我に返った少年は、知らず知らずの内に自分がノートをガン見していた事に気付き、白々しい真顔を作るが、もう手遅れだ。授業を邪魔されたことで、今にもチョークを投げてきそうな教師の真顔に対し、真顔で見つめ返した少年は、足早に、教室を去る。外へ出ると少年は、少女のノートに書いてあったジムとやらを探す。中央辺りの開けた場所から周りを見渡すと一際目立つ巨大な建物が目に飛び込んできた。その巨大な建物に、いったいどこの目立ちたがり屋が、これ見よがしに書いたのかと思うほどに大きく書かれたGYMの文字を見た少年は、自然と口を開け、呆気に捕らわれていた。気を取り直し、ジムのすぐ近くまで歩いてきた少年の視界に、段差が現れる。その段差は辺り一帯を仕切り、ジムに来るものを拒む様に、造られた姿に見える少年は、「遠くからは大きく書かれたGYMの文字で誘い、それに誘われて来た者を段差の仕切りによって拒む、なんてクレイジーなんだ…」と、若干苛立ちながら繋がる通路を探し、歩き出す。段差に沿って、しばらく歩いた少年に、遂にジムへと繋がっていそうな通路が現れる。やっとジムに辿り着けるという思いに、少年の歩みは自然と速くなる。「ういーっ!ひっく……待ちやがれ! わしの話を聞け!」傍らから聞こえてきた呼び掛けに歩みが止まる。ジムへの高ぶる気持ちで気付かなかったが、声のした方へと振り向くと通路に横たわる老人が寝そべりながら話し掛けてきていた。よく見ると顔は真っ赤に染まり、しゃっくりをしながら気持ち良さそうな表情を浮かべている。そう、紛れもなく飲んだくれである。昼間っから酔っ払う老人に無駄足を喰らった少年は、フルシカトで立ち去ろうとする。「……こら! 行くな!と言っとろーが!」と、言い放った老人は、酔っ払いとは思えないほど、勢い良く足技を掛けてくる!その傍らで放たれた足技に対し、後方へ勢い良く飛び上がった少年は、間一髪で足技をかわし、地面に着地する。向き直した視界の先で、横たわりながらも、鋭く見つめてくる老人の小さな瞳に、少年は、「なんてクレイジーなんだ…」と、改めて思う。「あらら じいちゃん! こんな所で寝ちゃって しょーがないわね!酔いが醒めるまで待つしかないわ」と、傍らに立ち、老人の介護をするお姉さんは呆れ顔で諦め、言い放つ。「しょーがないじゃなくて、何とかしてくれよ!そこ通れないんですけど…しかも、クレイジー」と、言うことも出来ず、少年は、苦笑いを浮かべる心の奥底に沸々と滾る苛立ちを隠しながらも、ひとまず、その場を後にする。行く当てを無くした少年に、あの言葉が蘇ってくる『便利な道具屋ですから トキワシティで ぜひ寄ってくださいね!…』「いやいや、あんな胡散臭い人物に惑わされてはダメだ」と、思い歩く少年の視界に看板を掲げる店が映る。看板には『フレンドリィショップ』と書かれている。間違いない、あの人物が言っていた店だ。「騙されるな!」そう自分に言い聞かせる気持ちとは逆に、怖いもの見たさに自然と伸びた足先が扉のセンサーに当たり、ドアが自動で開く。ウィーン…ドアが開く音と同時に威勢の良い掛け声が店内に響き渡る「いらっしゃいませっ!」その掛け声は店内を駆け巡り、遂に少年の耳へと届く。その大声に、ハッ!とした少年は我に返り、無意識の内に行われ、作り出されたこの状況を理解する。入るつもりのなかった店内へと目を向けると、レジからこちらをジーッと見つめる店長らしき人物と目が合ってしまう。その人物は入口に立つ少年に、ニカッと笑い、まだ見つめている。もう後戻りは出来ない。覚悟を決めた少年は、額からにじみ出る汗を手の甲で拭うと、得意の苦笑いを浮かべ、店内へとゆっくりと足を踏み入れる。「お!君はマサラタウンから来たんだね?」そう問いかけてくる店長に疑問を感じ、立ち止まる。何故この男は初めてこの店を訪れた自分にマサラタウンから来たのかを確認してくるのか、それとも店へと入ってきた人物一人一人にその事を確認しているのか?その時、少年の脳裏にあの出来事が浮かび上がってきた。いや違う、奴だ!奴に違いない!少年は、トキワシティへ来る途中に出会った胡散臭い人物の事をまた思い出していた。奴が、マサラタウンから来る自分の特徴を携帯電話で店長に連絡していたに違いない、でなければ、ああいう問いを掛けられるはずがない。あの男は、行き場をなくした自分がここを訪れる事まで計算していたのか!『トキワシティで ぜひ寄ってくださいね!』その言葉が少年の脳裏をかすめる。「クソっ!ハメられた!」その思いに、自然と歪んだ表情で向き直した視界の先で、ニカッと笑い、手招きをする店長の姿が目に映り、怪しんでいる事がバレぬ様に一瞬の内に作り笑いを浮かべた少年は、恐れながらもレジの方へと歩みを進める。「オーキド博士を知ってるね?」レジで向き合う店長は、また問いを掛けてくる。「だとしたらなんだ?キサマに答える義理は無い」そんな言葉が少年の頭に浮かび、吐き出されようとした瀬戸際で呑み込まれ、気付くと少年は、首を縦に振っていた。そう、この行動で少年が、オーキド博士に対して何らかの形で知人である事を裏付ける証拠となってしまう。その行動の後で、ハッ!と、その事に気付く少年へ「これ 頼まれてるんだけど 渡してくれるかい!」とフレンドリィにニカッと笑い、後ろの棚から届け物を取り出す店長。「断る。届け物なら運送会社にでも頼むんだな」と、きっぱりと断る事は出来ず、少年は手渡された届け物を受け取ってしまう。面倒ごとを押し付けてきたにも関わらず、送料すらも支払わない事を、当たり前の様な平然とした顔に「送料無料か!」と、心の中でツッコミを入れた少年は、苛立ちを隠し、フレンドリィショップを後にする。まんまとハメられた気持ちの少年は、自然と作り出された、しかめっ面のままマサラタウンへと到着する。研究所の手動ドアを開き、中へと入った少年は、相変わらずイソイソと働く研究員達の姿を目にする。その奥にある自分の研究室から、こちらに気付き、「久しぶり」というような様子で笑顔を見せるオーキド博士に、リュックから出した届け物を携えた少年は、面倒ごとを押し付けられ、少し不機嫌そうな面持ちで、足早に近付いて行く。「おお!サトシ」先に話し掛けたのは、久しぶりの再会を喜ぶ博士だった。「どーだい? わしの やったポケモンは……」博士の問い掛けに、少年はヒトカゲをモンスターボールから出して見せる。「ほう……だいぶ なついた みたいだな?」屈み、ヒトカゲの様子を見ながら頭を撫でる博士は、傍らに立つ少年を見上げ、ニカッと笑う。「お前 ポケモントレーナーの才能があるな!」曇りなき眼で褒め微笑みかけてくる博士に、不機嫌だった少年は、急に恥ずかしくなり、必死に不機嫌顔を作り、平然を装おうするが、褒められた事の嬉しさで表情が少しニヤケ、作り出された違和感のある表情に、首を傾げる博士を目にし、ハッ!とし、我に返った少年は、自分が不機嫌になった原因の、手に握られていた届け物を思い出す。「……え わしに渡す物が?」また首を傾げる博士は、少年から手渡された届け物を開ける。「おお!これは わしが注文してた特性のモンスターボールじゃ どうも ありがとよ!」この言葉を聞き少年は、注文していた事を忘れ、運悪く店を訪れたマサラタウン出身の自分に、貧乏くじが回ってきた事を理解する。「爺さん!」研究所のドアが開かれると同時に聞こえてきた、後ろからの聞き慣れた声に振り向くと、やはりアイツが立っていた。近付いてきたライバルは、少年と目が合うと、相変わらずキザな態度で「なんだ。お前もいたのか」と言わんばかりの呆れた表情を浮かべ、目線を逸らすと博士と向き合う。「すっかり忘れてた!俺に何か用事だって?」その言葉を聞いた少年は、「物忘れは爺さん譲りか」と、心の中で呟く。「おお そうじゃ!お前たちに頼みがあるんじゃ」物忘れが日常となった博士の指差した先の、机の上に何かがある。「机の上にあるのは わしが作ったポケモン図鑑!見つけたポケモンのデータが自動的に書き込まれて ページが増えていくという 大変ハイテクな図鑑なのじゃ!」と自分の発明の偉大さを自慢げに語る。「サトシ シゲル これをお前たちに預ける!」その言葉を聞いた少年は、思わず目を見開く。タダで貸してもらえるハイテクな図鑑、博士の粋な計らいに、苛立っていた少年の心は喜びへと変わり、気付けば自然とニヤケていた。博士から手渡されたポケモン図鑑に少年は、満面の笑みを浮かべる。「この世界の全てのポケモンを記録した完璧な図鑑を作ること! それが わしの夢だった! しかし わしも もう爺! そこまでムリは出来ん!そこでお前たちには わしの代わりに夢を果たしてほしいのじゃ!」自分の夢を熱く語る博士には目もくれず、ハイテク図鑑をいじり出した二人に気付いた博士は、少し呆れた後、コホンと一回咳ばらいをし、二人を注目させる。「さぁ 二人とも さっそく出発してくれい! これはポケモンの歴史に残る偉大な仕事じゃー!」自分の胸の内を伝えきった達成感に酔いしれる博士の一声で壮大な冒険が幕を開ける。「よーし!爺さん!全部俺に任せなー!」と調子のいい孫が、そんなことを言い始める。「やれやれ始まった」と心の中で思った少年が隣に向き直すと、キザにニヤ付き、見下す様に横目で笑うライバルと視線が交わる。「サトシ! 残念だがお前の出番は 全くねーぜ!」その根拠のない証言に「やれやれ」と心の中で平然を装う少年だったが、表情には悔しさが滲み出てしまう。「そうだ!家の姉ちゃんからタウンマップ借りて行こう! サトシには貸さない様に姉ちゃんに言っておくから 俺ん家へ来ても無駄だからな!」と嫌味を言い残すと、キザにピースを投げ、去って行った。相変わらずの憎たらしさに、俄然負けん気が強まる。少年は博士にお礼を言うと、駆け出し、研究所を後にする。博士に思いを託された少年達の、それぞれの旅が始まる。

【初代ポケモン・赤】中二病ポケモンマスターへの道 ブログ小説②

マサラタウンから北に伸びる通路。草の生い茂る通路に、少年は改めて足を踏み入れる。念の為振り返ってみるが、マサラタウンから視線を感じることはなく、胸を撫で下ろし、歩き出す。ガサッ!目の前に生い茂る、少年の腰の高さぐらいまで伸びる草むらの先から聞こえた物音は、勢いよく少年に近ずいて来る!次の瞬間、草むらから飛び出してきた小さな影は、日の光に照らされ、実体を現す!「うわっ!」思わず声を上げてしまった少年の傍らで着地した小動物は、こちらに向き直す。振り向く少年の見下ろした先で威嚇する小動物と目が合う。それは二本の前歯が印象的な各地で見られる代表的なポケモン、コラッタだった。「デカっ!」神出鬼没なポケモンだが、実物を見るのは初めての少年は、無意識の内に、その言葉を発していた。だが、驚いている場合ではない。今にも飛び掛かってくる勢いの小動物、このままでは噛み付かれてしまいそうだ。「ポケモンにはポケモンだ!」気を取り直した少年は、モンスターボールに手を伸ばす。「ゆけっ!ヒトカゲ!」決めゼリフと共にポケモンが勢いよく飛び出してきた!目の前に現れたヒトカゲに、小動物の威嚇の標的が変わる。前歯をむき出しにしたコラッタは、勢い良く駆け出してくる。危険を顧みず身体ごと突っ込んでくる小動物に、少年の掛け声と共にかわそうと動き出した赤い身体の傍らを通り過ぎた小動物は、そのままの勢いで目の前に生い茂る草むらへと身を潜める。振り向くヒトカゲの周りで、草むらが、あちらこちらで音を立てる。それはまるで、大勢の小動物に囲まれてしまった様な感覚だ。相手の正確な位置が掴めない少年は焦る気持ちに表情を曇らせる。草むらを自由に駆け回るコラッタにとって、ここは庭の様な物、足を踏み入れる侵入者は、まさに袋のネズミ!完全な相手のペースに、焦る気持ちを落ち着かせながら少年は、音のする方向に耳を傾ける。徐々に迫ってくる背後からの物音に、「後ろだ!」少年の掛け声に、素早く反応した振り向くヒトカゲの視界の先で、草むらから狙いを付け、勢い良く小動物が飛び出して来た!次の瞬間、全力で飛び込んできたコラッタをギリギリまで引き付けたヒトカゲの片腕から放たれた引っ搔く攻撃は、カウンターを喰らわす様に飛び込んできた身体に命中し、勢い良く引っ掻き飛ばした!コラッタの身体は、弾き飛ばされた先で草のかたまりに当たり、落ちた地面で目を回し仰向けに倒れる。さっきまでの劣勢とは嘘の様な、あっけなさにポカンとした顔でヒトカゲと顔を見合わせる。その後再び、コラッタに向き直した視界に、起き上がった小動物の後ろ姿があった。「あっ!」という間に視界から消えたコラッタは、草むらに吸い込まれる様に逃げ去って行った。しばらく草むらを搔き分け進んだ先で、開けた場所へと辿り着いた少年は、妙な人物を見つけてしまう。立ち並ぶ木々に顔を付け、通路側に立つ少年に背を向けて立っている人物はこちらを向くことはない。無視して立ち去ってもいいが、どうにも気になってしまった少年は、しびれを切らし、話しかけてしまう。すると、「待っていました!」と言わんばかりに勢い良く振り返った怪しい男は、ニカッと笑い、「私フレンドリィショップの定員です」と自分が怪しい者ではないと、疑われてもいないのに身の潔白を証明する様に聞かれてもいないことをフレンドリィに喋り出した姿を見て、少年の身体は自然と後ずさっていた。「便利な道具屋ですから トキワシティで ぜひ寄ってくださいね! そうだ!見本を差し上げましょう……どうぞ!」とギラギラと輝かせた視線の先で、力強く握らされた『きずぐすり』に、「いや、知らない人から物をもらったらいけないって親に言われてるんで」と言う事も出来ず、得意の苦笑いを浮かべ、軽くお辞儀をすると、それをリュックにしまう。しばらく歩き、振り返ると、また木々に顔を付け、獲物を待ち伏せる様に佇む男の姿に、少年は身震いし、足早に立ち去る。歩き進む先に見えてきた大きな木の下で休憩をとる事にした少年は、リュックを降ろすと大きな木に背もたれる。バサバサッ!大きな音を立て、大木の上から、いきなり降りてくる翼をもつ生き物は、少年のすぐそばに降りてきた。それに驚き、声を上げた少年に振り向いた小動物は、各地で目撃される代表的な鳥ポケモン、ポッポだった。このポケモンは大人しく、戦いを好まない事で知られていて、少年の前に降りてきた、このポッポも気にした様子もなく平然と佇んでいた。「今がチャンス!」そう思った少年は、モンスターボールに手を伸ばす。その時だった、少年の張り切った表情で気付いたのか、目の前に佇んでいたポッポは勢い良く空中へ飛び上がると、少年の頭上を通り過ぎ、飛び去って行く。「くそぉ~!」そう叫び、じだんだする少年の頭部に、ポトッ!…何かが落ちてきた。帽子を脱ぎ、確認する少年の表情は一瞬にして凍りつく。そこには、お気に入りの帽子の、ど真ん中にへばり付いたポッポの糞があった。「く、糞ぉ…」無意識の内に呟いていた、おやじギャグに気付き、更にテンションが下がる。休憩を終え、北へと進む少年の視界に木々に囲まれたトキワシティが見えてきた。しばらく進み、トキワシティへと辿り着いた少年は、半分観光気分で、取りあえず目の前にある建物へと足を運ぶ。ウィーン… 扉の目の前に立った少年を、受け入れる様に自動で開かれた扉を見て驚く。当然、田舎のマサラタウンに自動ドアはなく初めて見る少年の頭の中に「科学の力って すげー!」と言っていた住民の姿が浮かんで消えた。中へ入ると広々としたフロアにテーブルと椅子が並べられ、休憩を取る人の他、カウンターでポケモンの入ったモンスターボールを預ける人などが見受けられる。どうやらここが、ポケモンセンターの様だ。詳しくは知らないが、預けたポケモンが元気になって返ってくるポケモン専門の病院みたいなものらしい。カウンターに向かい、歩き出した少年の耳に、近くでくつろぐ人達の話し声が聞こえてきた。「ポケモンセンターは、この先どこの町に行ってもある!何匹預けてもタダだし こまめに使うといいよ!」何匹預けてもタダ!?しかも、ほぼ全国展開だと!?どこの石油王、いや、カジノ王が、何の目的で無償の施設を建てたのか?しかもそれを、ほぼ全国展開するとは…自分には想像もつかない事が行われている事に思わず立ち尽くしてしまう。「次の方、どうぞ」カウンターから話し掛けてくる女医さんの声を聞いた少年は、先程まで膨らませていた考えを全て忘れ、頭に残ったタダという言葉で、カウンターまで全力疾走し、ニヤついた顔でヒトカゲの入ったモンスターボールを勢い良く差し出す。その姿に一瞬怯んだ女医さんが改めて話し掛けてきた。「ようこそ!ポケモンセンターへ ここではポケモンの体力を回復致します モンスターボールを お預けになりますか?」その問いかけに対し、YESしか頭にない少年は、満面の笑みを浮かべ、大きく頷く。変な奴が来たという様な思いを隠そうとする様な表情にも見えた女医さんは「それでは預からせて頂きます!」とモンスターボールを預かると、機械の上に並べ、スイッチを入れる。すると、ほんの数秒で動き出した機械は停止し、ヒトカゲの入ったモンスターボールを手渡される。「お待ちどうさまでした!お預かりしたポケモンは みんな元気になりましたよ!またのご利用を お待ちしてます!」早過ぎる返納に驚き、頭を下げる女医さんにお辞儀をした少年は、施設の外へ出ると、ヒトカゲを出してみる。出てきたヒトカゲのすっかり元気になった姿を見て少年は、目の前の神施設のありがたさに手を合わせ、崇める。

【初代ポケモン・赤】中二病ポケモンマスターへの道 ブログ小説①

二階の自分の部屋。ファミコンで遊ぶ少年は、今年で10歳になる。「…………よし!そろそろ出かけよう!」お気に入りの帽子を被り、リュックを背負うと一階へ通じる階段を降りていく。一階の広間には大きなテーブル、椅子に座る母親は、ブラウン管テレビに映る午後のワイドショーを今日も眺めている。「…そうね 男の子はいつか旅に出るものなのよ。うん…… テレビの話よ!」そんな話を聞く息子は、いつもの様に苦笑いを浮かべる。だが、ここの家庭には父親の姿が無い。どうやら複雑な家庭の様だ。「そういえば、隣りのオーキド博士が、あなたを呼んでたわよ」その言葉を聞き、少年は博士との約束を思い出し、玄関のドアを開ける。どういった要件かは聞かされていないが、研究所に来るように言われていた。外に出た少年に、ゲームばっかしてんなよと言わんばかりに太陽の光が降り注ぐ。眩しい光に目を覆う視界は徐々に晴れてゆき、いつもの風景が現れる。そよ風の吹き抜けるマサラタウンには、自宅、幼馴染の家、オーキド博士の研究所の3つの建物が建っている。この3軒と関係のない外にいる住民は、どこで寝泊まりしているのか?…そんな事は子供が考える事ではない!少年は自宅から徒歩数秒で着く研究所の手動ドアを開く。中に入ると開けた部屋で数名の研究員がイソイソと働く姿が目に入ってきた。そこから見える奥の部屋、博士の研究室に見慣れた後ろ姿が佇んでいた。近ずく少年に振り返る見慣れた姿の少年は「なんだー サトシか!オーキドの爺さんなら居ねーよ」と、捨て台詞を放ち、呆れた様に、ほくそ笑む姿に少し苛立ち、研究所を後にする。…しばらく探し回ったがオーキド博士の姿はない。「いい年こいて、かくれんぼか?」そんな考えが頭をよぎる。だが、この小さな街、マサラタウンには身を隠せる所などない。マサラタウンから北に伸びる一本の通路。もしかしたら、北の街に買い出しにでも出かけたのか…。少年は、通路の草むらへと足を踏み入れようとする。その時だった!「おーい!待てー!待つんじゃあ!」いきなり背後から聞こえてきた大きな掛け声に、一瞬ビクつき振り返る視界に、慌てて駆け寄ってくる白衣の爺さんは、息を切らす。「危ないところだった!草むらでは野生のポケモンが飛び出す!こちらもポケモンを持っていれば闘えるのだが……そうじゃ!……ちょっとわしに付いてきなさい!」半ば強引に付いて行かされる形になった少年は、自分が草むらに入ろうとする瞬間まで背後から観察されていたのではないかと疑問を抱き、白衣の後ろ姿を前に、少しゾッとする。研究所の手動ドアを開き広間に入って来る二人に気付き、振り返る幼馴染は「爺さん!待ちくたびれたぞー!」と腕を組み、ポーズを決めながら話しかけてくる。「シゲルか?………おお そうか わしが呼んだのじゃった!」この言葉を聞き少年は、自分を呼んでいたことも忘れていたんだろうと気付かされる。「ちょっと待っておれ!ほれ サトシ!そこに3匹ポケモンが居るじゃろう!」指を差された先のテーブルに3つ並んだボールが目に入ってきた。「ほっほ!モンスターボールの中にポケモンが入れてあるんじゃ。昔は、わしもバリバリのポケモントレーナーとして鳴らしたもの!老いぼれた今はポケモンも3匹しか残っとらんが お前に一匹やろう!……さぁ 選べ!」それを聞いた幼馴染は「あッ!ずるい!爺さん!俺にも くれよお!」と不機嫌そうに言い放ち、じだんだする。武勇伝を聞かされ、苦笑いを浮かべていた少年の顔は驚きへと変わり、幼馴染を見る横目は先に選べる優越感で、無意識の内にニヤケ顔へと変わる。「まー!慌てるな シゲル!お前も好きな物を取れ!」そう言い、孫をなだめる博士には目もくれず、少年は、このハイリスクハイリターンに瞳を輝かせ、真剣にボールを見つめている。「キミにきめた!」何故か気が付けば、自然とそのセリフを吐いていた。少年の選んだボールから出てきたのは、尻尾の先に炎を灯す全身を真っ赤に染めたトカゲポケモンだ。「このポケモンは ほんとに元気がいいぞ!」微笑み、語り掛けてくる博士に、満面の笑みを浮かべる。「じゃ 俺は これ!」猛ダッシュし、ボールを掴んだ幼馴染は、それを高々と掲げ「俺の選んだポケモンの方が強そうだぜ」と、偉そうに見下ろしてくる。根拠のない強がりと分かっていながらも、表情は自然と歪んでしまう。少年は博士にお礼を言うと、高鳴る胸に研究所を後にしようと駆け出してゆく!「待てよ!サトシ!」後ろから聞こえてきた呼び声に少年は足止めを喰らう。「せっかく爺さんにポケモン貰ったんだぜ!……ちょっと俺の相手してみろ!」自信満々に近ずいて来た幼馴染は、返事も聞かずにポケモンを繰り出してきた!無視して立ち去ろうとも思ったが、コイツの天狗の鼻をへし折ろうとする闘争心が勝り、気が付けばモンスターボールに手が伸びていた。「ゆけっ!ヒトカゲ!」決めゼリフと共に勢いよくポケモンが飛び出してきた!周りの研究員と共に博士がざわつく。幼馴染の繰り出してきたポケモンは、全身を青く染め、硬い甲羅で身を守る亀の子ポケモンだ。ならば先手必勝!少年の掛け声に、距離を一気に詰めた鋭い爪が、青い甲羅に襲い掛かる!「かわせ!」その掛け声に、体勢を翻した青い甲羅は、近ずいて来た爪を寸前でかわし、かわされた爪は勢いよく書物を引き裂く!破けた書物をかき集める研究員の傍らで、檄を飛ばす幼馴染の掛け声に、青い甲羅は勢いよく体当たりを放つ!「かわせ!」少年の掛け声に合わせるように緩やかに回避した真っ赤な身体の傍らを通り過ぎた青い甲羅は、書物がびっしりと詰まった本棚に、勢い良くぶつかり書物の山がバラバラと音を立て、崩れ落ちてゆく。青ざめてゆく研究員とは対照的に博士の顔は赤く染まってゆく。睨み合う両者に、周りの惨状は目に映らない。一瞬の静寂の後、先に仕掛けたのはヒトカゲだった!間合いの近い状態からの引っ搔く攻撃に、かわし事の出来なかった甲羅は引っ搔き飛ばされる!床に着地したゼニガメを畳みかける様に詰め寄ってくるヒトカゲ!その時、幼馴染の檄が飛ぶ!近寄ってくるヒトカゲに、背中を向け尻尾を振るゼニガメ。「しまった!罠だ!」少年が気付き声を上げるが、時すでに遅し!視界の先で振られる尻尾に目を回し、無防備になるヒトカゲの姿があった。「今だっ!!」その一声に、勢いよく走り出したゼニガメの力強い体当たりがヒトカゲの脇腹に命中する!勢いよく弾き飛ばされたヒトカゲの身体は研究所で一番大きな本棚に激しくぶつかり、その衝撃に、本棚は勢いよく倒れ、大量の書物をまき散らす!少年は慌ててヒトカゲに駆け寄り、目を回すヒトカゲを抱きかかえる。「やりー!やっぱ俺って天才?」高笑いするライバルに、悔しいがグウの音も出ない少年の表情は梅干しの様にしわくちゃになってしまう。「ばっかもーーーん!!」研究所内に響き渡った叫び声は、紛れもなくオーキド博士の物だった。その叫びを聞き、周りを見渡す二人は我に返る。倒れた本棚、床一面に広がる書物を片付ける研究員達。そして、激昂し、鬼の形相を真っ赤に染め上げたオーキド博士がこちらを見ている。「あちゃ~」っと言わんばかりの申し訳なさそうな表情を浮かべる二人は首根っこを摑まれ、研究所から放り出される。…「やっちまったな」と顔を見合わせる二人。「よーし!他のポケモンと闘わせて もっともっと強くするぜ!」とライバルは開き直り、立ちあがる。「サトシ!そんじゃ あばよ!」キザにピースを投げ、ニヤケ見下ろし去っていった。鼻で笑われた様な感覚に「アイツには負けられない」そう思い、立ち上がる。青空が広がり、心地良い風が吹く中、少年は歩き始める。

【モンハンワールド】ブログ小説㉓

冥灯龍ゼノ・ジーヴァ#48

確認されている古龍の調査を全て終え、帰還したハンター達は祝杯を上げる。宴の夜が盛大に盛り上がる中、大団長からの言伝で約束の地へと向かうハンターは一人拠点を後にする。周りを結晶に埋め尽くされた船着き場へ辿り着いたハンターは、出迎える大団長と竜人族のハンターに合流する。小船に乗り込むハンター達は、竜人族のハンターに導かれ、結晶が連なり生え、巨大な森の様に見える間に流れる小さな川を、漕いで奥地へと進んでいく。死した古龍は、瘴気の谷で分解され、地脈を通って蓄積し、結晶化する。そのエネルギーが集まる場所が、この結晶の地だという。だが、ここ数年、膨大なエネルギーの集まる兆候に、異変を感じ、竜人族のハンターは調査を続けていたと聞かされる。漕ぎ進み、陸地へと辿り着いた一行は、地脈を流れるエネルギーが収束する地へと足を踏み入れる。そこには、長年かけて結晶化した古龍の生体エネルギーが巨大な結晶を生み出していた。いくつも生え聳え立つ巨大な結晶の中心に、掲げられた繭の様な塊をハンター達は見上げる。それは、集まってくる膨大なエネルギーを吸収して育つ巨大な生物の様に大きく、静かに佇む。次の瞬間、繭の中から放たれた、いくつもの巨大な光の柱が周りに聳え立つ巨大な結晶を次々と破壊してゆく。迫ってくる光の柱に運悪く直撃してしまった竜人族のハンターは、弾き飛ばされた先の地面を転がり、それを見た大団長とハンターは、すぐさま駆け寄る。息はあるが気を失っている。早く手当てをしなければ。そう思った時、繭から顔を出した巨大な化け物は、頭部に付く無数の眼でハンター達を見下ろすと、地上に落下し、凄まじい地響きを立て、降り立つ。その姿に立ち向かおうとする大団長を引き止め、竜人族のハンターの事をお願いする。一瞬険しい表情を浮かばせる大団長だったが、快く引き受けてくれた。必ず戻ると約束し、竜人族のハンターを抱え、この地を後にする大団長に背を向け、巨大な怪物へと走り出す!その姿に放たれた大地を揺るがす凄まじい咆哮は、森の様に生え連なる巨大な結晶を共鳴させる!離れた先から押し寄せてくる激しい叫びを肌で感じながら、怯む事無く駆け抜けてくる姿に、大きな前脚を地面に付け、巨大な頭部をのけ反らせる怪物の姿に、底知れぬ危険を感じたハンターは、真横に走り出す!振り戻ってくる巨大な口からは先ほどとは比べ物にならない程の巨大な光の柱が、一瞬にして放出される!その姿を横目で捕らえながら全力で飛び込む様に跳躍した身体の傍らを、通り過ぎてゆく光の柱は直線上にある全ての物を一瞬にして呑み込んでゆく!周りには凄まじい爆風が押し寄せ、爆風を傍らで受けた身体は、勢いよく弾き飛ばされた先の地面を転がる。全身に走る痛みに耐えながら、光の柱が通った先に広がる光景を目にし、恐怖する!その直線状には何一つ残っておらず、光の通った地面には、どこまでも続く巨大な道が出来上がっている。奴をこの地から出してしまえば、この強大な力に、被害は計り知れない。果てしなく続く道に、ゾッとするハンターに、巨大な頭部がゆっくりと振り向く。地脈を流れる膨大なエネルギーが収束する地。生れ出た巨大な古龍の絶望的な力、勝算などない様なこの状況を前に、立ち上がるハンターは迷う事無く駆け出してゆく!

【モンハンワールド】ブログ小説㉒

炎王龍テオ・テスカトル#46

新大陸での調査を進めるハンターは、今回特定された古龍の居場所へと向かう。降り立った大地から見上げる空は噴煙が上がり、その地にぽっかりと開く大穴からは、熱気が充満し、地の色を赤々と発光させる火山地帯が覗き込める。その地へと足を踏み入れていくハンターは、袋から出したクーラードリンクを飲みながら、溶岩が溶け出し赤々と発光する狭い通り道を下ってゆく。奥には溶岩の冷え固まった開けた場所、その奥には果てしなく続く溶岩の海がどこまでも広がっている。溶岩の冷え固まった地面に佇み、大きな翼を休ませる古龍は、赤い甲殻に身を包み、頭部を覆う様に生える立派な鬣は王の証である様に気高く生え揃う。その地に足を踏み入れたハンターの視界の先に、熱風で鬣をなびかせる気高き王の姿が映し出される。向き合う王の激しい咆哮は、果てしなく続く溶岩の海へと響き渡ってゆく。熱風の中、視界の先から放たれた開戦の合図に、武器を握り締め、走り出すハンターに向けて炎王龍は灼熱の炎を勢いよく吐き出す!炎王龍の頭部の高さまである、吐き出された炎は地面を走る様に勢いよくハンターに迫ってくる!とっさに真横に転がった身体の傍らを通り過ぎる炎に、まとわり付いた凄まじい熱気がハンターに押し寄せてくる。蒸し焼きにされてしまいそうな熱気に、逃げる様に走り出したハンターを灼熱の炎が追いかけてくる!横目で見た視界に立つ炎王龍を見て、その状況を理解する。吐き出された炎は今も放出され続け、放出している頭部は、ハンターの逃げる方角に合わせて向きを変えてきているのだ。もし立ち止まろう物なら、その身体は一瞬にして跡形もなく燃え尽きてしまうだろう。だが、このまま走り続けたとしても、追いつかれ、燃やされてしまうのは時間の問題だ。走りながら考えるハンターは、ある事に気が付き、一つの考えが頭に浮かぶ。それは危険な賭けになるが、やらなければいずれ燃やされてしまう。額に汗をにじませながら覚悟を決めたハンターは、炎王龍に回り込む様に全力で走り出す!直線的に逃げるのをやめた分、炎の迫る速度は速くなる。迫ってくる炎に恐怖を感じながらを駆けてゆくハンターは炎王龍の傍らまで辿り着く。だが、振り向かれる頭部の方が一歩早い。このままでは辿り着く前に全身を焼かれてしまう。一か八か地面を力強く蹴ったハンターは身体ごと炎王龍に向かい飛び込んでゆく!それは、振り向かれる頭部を間一髪でかわし、懐に潜り込んだハンターのすぐ後ろの地面を、灼熱の炎が勢いよく焼いてゆく。ハンターの考えは放出口より後ろに回り込めれば炎をかわす事が出来るというものだった。一か八かの賭けだったが何とか成功する事が出来たハンターは、すかさず立ち上がり、見上げた視界に映る巨大な胴体に武器の矛先を力強く叩き上げる!勢いよく突き上げる様に下から叩き上げられた胴体は、悲鳴を上げる様によろめく。その姿に武器の持ち手に力を込め、もう一度勢いよく矛先を叩き上げる!だがそれは、駆け出し始めた後ろ脚を叩き抜け、空を切る。駆け抜けた炎王龍は振り返る視界の先に立つハンターに勢いよく飛び掛かる!向き直していたハンターは武器を腰に掛け、正面から迫ってくる姿に対し、真横に飛び込む様に回避する。その傍らに勢いよく飛び込んできた炎王龍は、力強い前脚で地面を砕き止まる。地面を砕かれた衝撃で、弾け飛んでくる岩石の欠片をかわしながら身体を翻したハンターは、傍らに見える隙の出来た胴体に向けて勢いよく矛先を叩き上げる!胴体にぶち当たる感覚に手ごたえを感じたハンターは、武器を持ち直し、もう一撃を放とうとするが、妙な違和感に捕らわれる。熱気の急激に強まる感覚に、戻し見た視界に映る炎王龍の姿に、思わず息を吞む。それは目の前に佇む炎王龍の全身が炎に包まれ、火だるまの様に燃え上がっているのだ。近くにいるだけで燃えて尽きてしまいそうな凄まじい熱気に、思わず距離を取ってしまったハンターを、視界の傍らで見つけた炎王龍は振り向き、見下ろす。溶岩の冷え固まった地面が広がる開けた陸地。周りには溶岩の海がどこまでも続く風景の中、全身に炎の鎧を身に付けた炎王龍の視界に捕らえてしまったハンターを、火力を更に高めた灼熱の炎が容赦なく襲い掛かる!

套龍ヴァルハザク#47

第3期団から寄せられた情報により調査を進めていた古龍の居場所が遂に特定された。翼竜に摑まり、この地へと降り立ったハンターは、様々な骨が散らばる開けた通り道を抜け、奥地へと進んでいく。酸の泉が自然に作られる開けた場所を抜け、腐れかけた台地の根を力強く搔き分けた先にある開けた場所へと辿り着く。そこには、様々な骨が所狭しと敷き詰められ、その中央には様々な骨が高々と積み重なった屍の山が聳え立っていた。足を踏み入れるハンターに、ギルオスの群れが騒ぎ出す。侵入者を取り囲んだ群れは、次々と飛び掛かっていく。攻撃をかわしながら、いつもより気性の荒い群れをよく見ると瘴気状態に陥っている。下手に攻撃を受け続ければ自分も瘴気状態に陥ってしまう。倒してしまうのが無難だ。そう思った時だった。周りの瘴気が急激に吸い上げられる様に聳え立つ屍の山へと集められてゆく。すると周りを取り囲む群れが急に苦しみ始め、やがて動かなくなる。まるで瘴気を吸い取られてミイラになってしまった様に…。次の瞬間、その屍の山はバラバラと音を立て、立ち上がっていく。その姿を見上げながら呆然と立ち尽くすハンターの視界に、その全貌が映し出される。表面は爛れた皮膚の様な皮に覆われ、そこからは二層に分かれた顎を覗かせ、穴の開いた翼を大きく広げる。死しても尚、生き続ける不死の怪物を思わせる様な悍ましい姿を見上げるハンターに、気付いた屍套龍は見下ろした先にいるハンターに向けて激しい咆哮を放つ!谷へと響き渡っていく程の激しい咆哮に、敷き詰められた骨達は揺れ重なり悲鳴を上げる。その咆哮をまともに受けたハンターは、鳴り響く声に意識が薄れる。叫ぶのを止め、ゆっくりと振り戻ってきた頭部は、ハンターに向き直す。ようやく薄っすらと戻ってきた意識、視界に映し出されたのは、目の前まで迫った屍套龍の二層に分かれる大顎だった!噛み砕く様に突如視界に現れた大顎に、考える間もなく嚙み飛ばされた身体は、防具を貫通してきた二層の大顎に、その身を貫かれ、激しい痛みと共に宙を舞い、落ちた先の地面で敷き詰められた骨を散らばらせながら転がってゆく。嚙み傷から流れ出る血を押さえながら立ち上がる視界の傍らに立つ巨体は、長く巨大な尻尾をハンターに向けて振り下ろす!痛みに耐えながらも、懐に向かって飛び込む様に跳躍した身体は、振り下ろされた尻尾と後ろ脚の間を潜り抜け、立ち上がった視界に佇む巨大な胴体に、構えた武器を力強く叩き上げる!だがそれは、爛れる様な皮に阻まれ、鈍い音を立て、止まる。懐からくる衝撃に、後方に跳躍した巨体は、地面に着地すると同時に前のめりに噛み付いてくる!倒れ込む様に迫る大顎に、とっさに転がった身体は、大顎は回避できたが前脚の目の前で止まってしまい、そのまま激突される様に前脚に弾き出される。巨体の範囲の広い攻撃に苦戦しながら、立ち上がった視界に屍套龍の口から勢いよく吐き出されてゆく圧縮された瘴気が襲い掛かる!為す術も無く押し流されてゆく身体は、骨の敷き詰められた地面を勢いよく転がった先で止まる。地面に手をつき、立ち上がろうとする身体を異変が襲う!全身に浴びせられた瘴気に体力が急激に奪われる。瘴気の谷。骨が敷き詰められた開けた奥地。身体を瘴気に蝕まれ、痛みに耐えながら立ち上がる視界に、周りの瘴気を勢いよく吸い上げていく屍套龍の姿が映し出される。