二階の自分の部屋。ファミコンで遊ぶ少年は、今年で10歳になる。「…………よし!そろそろ出かけよう!」お気に入りの帽子を被り、リュックを背負うと一階へ通じる階段を降りていく。一階の広間には大きなテーブル、椅子に座る母親は、ブラウン管テレビに映る午後のワイドショーを今日も眺めている。「…そうね 男の子はいつか旅に出るものなのよ。うん…… テレビの話よ!」そんな話を聞く息子は、いつもの様に苦笑いを浮かべる。だが、ここの家庭には父親の姿が無い。どうやら複雑な家庭の様だ。「そういえば、隣りのオーキド博士が、あなたを呼んでたわよ」その言葉を聞き、少年は博士との約束を思い出し、玄関のドアを開ける。どういった要件かは聞かされていないが、研究所に来るように言われていた。外に出た少年に、ゲームばっかしてんなよと言わんばかりに太陽の光が降り注ぐ。眩しい光に目を覆う視界は徐々に晴れてゆき、いつもの風景が現れる。そよ風の吹き抜けるマサラタウンには、自宅、幼馴染の家、オーキド博士の研究所の3つの建物が建っている。この3軒と関係のない外にいる住民は、どこで寝泊まりしているのか?…そんな事は子供が考える事ではない!少年は自宅から徒歩数秒で着く研究所の手動ドアを開く。中に入ると開けた部屋で数名の研究員がイソイソと働く姿が目に入ってきた。そこから見える奥の部屋、博士の研究室に見慣れた後ろ姿が佇んでいた。近ずく少年に振り返る見慣れた姿の少年は「なんだー サトシか!オーキドの爺さんなら居ねーよ」と、捨て台詞を放ち、呆れた様に、ほくそ笑む姿に少し苛立ち、研究所を後にする。…しばらく探し回ったがオーキド博士の姿はない。「いい年こいて、かくれんぼか?」そんな考えが頭をよぎる。だが、この小さな街、マサラタウンには身を隠せる所などない。マサラタウンから北に伸びる一本の通路。もしかしたら、北の街に買い出しにでも出かけたのか…。少年は、通路の草むらへと足を踏み入れようとする。その時だった!「おーい!待てー!待つんじゃあ!」いきなり背後から聞こえてきた大きな掛け声に、一瞬ビクつき振り返る視界に、慌てて駆け寄ってくる白衣の爺さんは、息を切らす。「危ないところだった!草むらでは野生のポケモンが飛び出す!こちらもポケモンを持っていれば闘えるのだが……そうじゃ!……ちょっとわしに付いてきなさい!」半ば強引に付いて行かされる形になった少年は、自分が草むらに入ろうとする瞬間まで背後から観察されていたのではないかと疑問を抱き、白衣の後ろ姿を前に、少しゾッとする。研究所の手動ドアを開き広間に入って来る二人に気付き、振り返る幼馴染は「爺さん!待ちくたびれたぞー!」と腕を組み、ポーズを決めながら話しかけてくる。「シゲルか?………おお そうか わしが呼んだのじゃった!」この言葉を聞き少年は、自分を呼んでいたことも忘れていたんだろうと気付かされる。「ちょっと待っておれ!ほれ サトシ!そこに3匹ポケモンが居るじゃろう!」指を差された先のテーブルに3つ並んだボールが目に入ってきた。「ほっほ!モンスターボールの中にポケモンが入れてあるんじゃ。昔は、わしもバリバリのポケモントレーナーとして鳴らしたもの!老いぼれた今はポケモンも3匹しか残っとらんが お前に一匹やろう!……さぁ 選べ!」それを聞いた幼馴染は「あッ!ずるい!爺さん!俺にも くれよお!」と不機嫌そうに言い放ち、じだんだする。武勇伝を聞かされ、苦笑いを浮かべていた少年の顔は驚きへと変わり、幼馴染を見る横目は先に選べる優越感で、無意識の内にニヤケ顔へと変わる。「まー!慌てるな シゲル!お前も好きな物を取れ!」そう言い、孫をなだめる博士には目もくれず、少年は、このハイリスクハイリターンに瞳を輝かせ、真剣にボールを見つめている。「キミにきめた!」何故か気が付けば、自然とそのセリフを吐いていた。少年の選んだボールから出てきたのは、尻尾の先に炎を灯す全身を真っ赤に染めたトカゲポケモンだ。「このポケモンは ほんとに元気がいいぞ!」微笑み、語り掛けてくる博士に、満面の笑みを浮かべる。「じゃ 俺は これ!」猛ダッシュし、ボールを掴んだ幼馴染は、それを高々と掲げ「俺の選んだポケモンの方が強そうだぜ」と、偉そうに見下ろしてくる。根拠のない強がりと分かっていながらも、表情は自然と歪んでしまう。少年は博士にお礼を言うと、高鳴る胸に研究所を後にしようと駆け出してゆく!「待てよ!サトシ!」後ろから聞こえてきた呼び声に少年は足止めを喰らう。「せっかく爺さんにポケモン貰ったんだぜ!……ちょっと俺の相手してみろ!」自信満々に近ずいて来た幼馴染は、返事も聞かずにポケモンを繰り出してきた!無視して立ち去ろうとも思ったが、コイツの天狗の鼻をへし折ろうとする闘争心が勝り、気が付けばモンスターボールに手が伸びていた。「ゆけっ!ヒトカゲ!」決めゼリフと共に勢いよくポケモンが飛び出してきた!周りの研究員と共に博士がざわつく。幼馴染の繰り出してきたポケモンは、全身を青く染め、硬い甲羅で身を守る亀の子ポケモンだ。ならば先手必勝!少年の掛け声に、距離を一気に詰めた鋭い爪が、青い甲羅に襲い掛かる!「かわせ!」その掛け声に、体勢を翻した青い甲羅は、近ずいて来た爪を寸前でかわし、かわされた爪は勢いよく書物を引き裂く!破けた書物をかき集める研究員の傍らで、檄を飛ばす幼馴染の掛け声に、青い甲羅は勢いよく体当たりを放つ!「かわせ!」少年の掛け声に合わせるように緩やかに回避した真っ赤な身体の傍らを通り過ぎた青い甲羅は、書物がびっしりと詰まった本棚に、勢い良くぶつかり書物の山がバラバラと音を立て、崩れ落ちてゆく。青ざめてゆく研究員とは対照的に博士の顔は赤く染まってゆく。睨み合う両者に、周りの惨状は目に映らない。一瞬の静寂の後、先に仕掛けたのはヒトカゲだった!間合いの近い状態からの引っ搔く攻撃に、かわし事の出来なかった甲羅は引っ搔き飛ばされる!床に着地したゼニガメを畳みかける様に詰め寄ってくるヒトカゲ!その時、幼馴染の檄が飛ぶ!近寄ってくるヒトカゲに、背中を向け尻尾を振るゼニガメ。「しまった!罠だ!」少年が気付き声を上げるが、時すでに遅し!視界の先で振られる尻尾に目を回し、無防備になるヒトカゲの姿があった。「今だっ!!」その一声に、勢いよく走り出したゼニガメの力強い体当たりがヒトカゲの脇腹に命中する!勢いよく弾き飛ばされたヒトカゲの身体は研究所で一番大きな本棚に激しくぶつかり、その衝撃に、本棚は勢いよく倒れ、大量の書物をまき散らす!少年は慌ててヒトカゲに駆け寄り、目を回すヒトカゲを抱きかかえる。「やりー!やっぱ俺って天才?」高笑いするライバルに、悔しいがグウの音も出ない少年の表情は梅干しの様にしわくちゃになってしまう。「ばっかもーーーん!!」研究所内に響き渡った叫び声は、紛れもなくオーキド博士の物だった。その叫びを聞き、周りを見渡す二人は我に返る。倒れた本棚、床一面に広がる書物を片付ける研究員達。そして、激昂し、鬼の形相を真っ赤に染め上げたオーキド博士がこちらを見ている。「あちゃ~」っと言わんばかりの申し訳なさそうな表情を浮かべる二人は首根っこを摑まれ、研究所から放り出される。…「やっちまったな」と顔を見合わせる二人。「よーし!他のポケモンと闘わせて もっともっと強くするぜ!」とライバルは開き直り、立ちあがる。「サトシ!そんじゃ あばよ!」キザにピースを投げ、ニヤケ見下ろし去っていった。鼻で笑われた様な感覚に「アイツには負けられない」そう思い、立ち上がる。青空が広がり、心地良い風が吹く中、少年は歩き始める。
【モンハンワールド】ブログ小説㉓
確認されている古龍の調査を全て終え、帰還したハンター達は祝杯を上げる。宴の夜が盛大に盛り上がる中、大団長からの言伝で約束の地へと向かうハンターは一人拠点を後にする。周りを結晶に埋め尽くされた船着き場へ辿り着いたハンターは、出迎える大団長と竜人族のハンターに合流する。小船に乗り込むハンター達は、竜人族のハンターに導かれ、結晶が連なり生え、巨大な森の様に見える間に流れる小さな川を、漕いで奥地へと進んでいく。死した古龍は、瘴気の谷で分解され、地脈を通って蓄積し、結晶化する。そのエネルギーが集まる場所が、この結晶の地だという。だが、ここ数年、膨大なエネルギーの集まる兆候に、異変を感じ、竜人族のハンターは調査を続けていたと聞かされる。漕ぎ進み、陸地へと辿り着いた一行は、地脈を流れるエネルギーが収束する地へと足を踏み入れる。そこには、長年かけて結晶化した古龍の生体エネルギーが巨大な結晶を生み出していた。いくつも生え聳え立つ巨大な結晶の中心に、掲げられた繭の様な塊をハンター達は見上げる。それは、集まってくる膨大なエネルギーを吸収して育つ巨大な生物の様に大きく、静かに佇む。次の瞬間、繭の中から放たれた、いくつもの巨大な光の柱が周りに聳え立つ巨大な結晶を次々と破壊してゆく。迫ってくる光の柱に運悪く直撃してしまった竜人族のハンターは、弾き飛ばされた先の地面を転がり、それを見た大団長とハンターは、すぐさま駆け寄る。息はあるが気を失っている。早く手当てをしなければ。そう思った時、繭から顔を出した巨大な化け物は、頭部に付く無数の眼でハンター達を見下ろすと、地上に落下し、凄まじい地響きを立て、降り立つ。その姿に立ち向かおうとする大団長を引き止め、竜人族のハンターの事をお願いする。一瞬険しい表情を浮かばせる大団長だったが、快く引き受けてくれた。必ず戻ると約束し、竜人族のハンターを抱え、この地を後にする大団長に背を向け、巨大な怪物へと走り出す!その姿に放たれた大地を揺るがす凄まじい咆哮は、森の様に生え連なる巨大な結晶を共鳴させる!離れた先から押し寄せてくる激しい叫びを肌で感じながら、怯む事無く駆け抜けてくる姿に、大きな前脚を地面に付け、巨大な頭部をのけ反らせる怪物の姿に、底知れぬ危険を感じたハンターは、真横に走り出す!振り戻ってくる巨大な口からは先ほどとは比べ物にならない程の巨大な光の柱が、一瞬にして放出される!その姿を横目で捕らえながら全力で飛び込む様に跳躍した身体の傍らを、通り過ぎてゆく光の柱は直線上にある全ての物を一瞬にして呑み込んでゆく!周りには凄まじい爆風が押し寄せ、爆風を傍らで受けた身体は、勢いよく弾き飛ばされた先の地面を転がる。全身に走る痛みに耐えながら、光の柱が通った先に広がる光景を目にし、恐怖する!その直線状には何一つ残っておらず、光の通った地面には、どこまでも続く巨大な道が出来上がっている。奴をこの地から出してしまえば、この強大な力に、被害は計り知れない。果てしなく続く道に、ゾッとするハンターに、巨大な頭部がゆっくりと振り向く。地脈を流れる膨大なエネルギーが収束する地。生れ出た巨大な古龍の絶望的な力、勝算などない様なこの状況を前に、立ち上がるハンターは迷う事無く駆け出してゆく!
【モンハンワールド】ブログ小説㉒
新大陸での調査を進めるハンターは、今回特定された古龍の居場所へと向かう。降り立った大地から見上げる空は噴煙が上がり、その地にぽっかりと開く大穴からは、熱気が充満し、地の色を赤々と発光させる火山地帯が覗き込める。その地へと足を踏み入れていくハンターは、袋から出したクーラードリンクを飲みながら、溶岩が溶け出し赤々と発光する狭い通り道を下ってゆく。奥には溶岩の冷え固まった開けた場所、その奥には果てしなく続く溶岩の海がどこまでも広がっている。溶岩の冷え固まった地面に佇み、大きな翼を休ませる古龍は、赤い甲殻に身を包み、頭部を覆う様に生える立派な鬣は王の証である様に気高く生え揃う。その地に足を踏み入れたハンターの視界の先に、熱風で鬣をなびかせる気高き王の姿が映し出される。向き合う王の激しい咆哮は、果てしなく続く溶岩の海へと響き渡ってゆく。熱風の中、視界の先から放たれた開戦の合図に、武器を握り締め、走り出すハンターに向けて炎王龍は灼熱の炎を勢いよく吐き出す!炎王龍の頭部の高さまである、吐き出された炎は地面を走る様に勢いよくハンターに迫ってくる!とっさに真横に転がった身体の傍らを通り過ぎる炎に、まとわり付いた凄まじい熱気がハンターに押し寄せてくる。蒸し焼きにされてしまいそうな熱気に、逃げる様に走り出したハンターを灼熱の炎が追いかけてくる!横目で見た視界に立つ炎王龍を見て、その状況を理解する。吐き出された炎は今も放出され続け、放出している頭部は、ハンターの逃げる方角に合わせて向きを変えてきているのだ。もし立ち止まろう物なら、その身体は一瞬にして跡形もなく燃え尽きてしまうだろう。だが、このまま走り続けたとしても、追いつかれ、燃やされてしまうのは時間の問題だ。走りながら考えるハンターは、ある事に気が付き、一つの考えが頭に浮かぶ。それは危険な賭けになるが、やらなければいずれ燃やされてしまう。額に汗をにじませながら覚悟を決めたハンターは、炎王龍に回り込む様に全力で走り出す!直線的に逃げるのをやめた分、炎の迫る速度は速くなる。迫ってくる炎に恐怖を感じながらを駆けてゆくハンターは炎王龍の傍らまで辿り着く。だが、振り向かれる頭部の方が一歩早い。このままでは辿り着く前に全身を焼かれてしまう。一か八か地面を力強く蹴ったハンターは身体ごと炎王龍に向かい飛び込んでゆく!それは、振り向かれる頭部を間一髪でかわし、懐に潜り込んだハンターのすぐ後ろの地面を、灼熱の炎が勢いよく焼いてゆく。ハンターの考えは放出口より後ろに回り込めれば炎をかわす事が出来るというものだった。一か八かの賭けだったが何とか成功する事が出来たハンターは、すかさず立ち上がり、見上げた視界に映る巨大な胴体に武器の矛先を力強く叩き上げる!勢いよく突き上げる様に下から叩き上げられた胴体は、悲鳴を上げる様によろめく。その姿に武器の持ち手に力を込め、もう一度勢いよく矛先を叩き上げる!だがそれは、駆け出し始めた後ろ脚を叩き抜け、空を切る。駆け抜けた炎王龍は振り返る視界の先に立つハンターに勢いよく飛び掛かる!向き直していたハンターは武器を腰に掛け、正面から迫ってくる姿に対し、真横に飛び込む様に回避する。その傍らに勢いよく飛び込んできた炎王龍は、力強い前脚で地面を砕き止まる。地面を砕かれた衝撃で、弾け飛んでくる岩石の欠片をかわしながら身体を翻したハンターは、傍らに見える隙の出来た胴体に向けて勢いよく矛先を叩き上げる!胴体にぶち当たる感覚に手ごたえを感じたハンターは、武器を持ち直し、もう一撃を放とうとするが、妙な違和感に捕らわれる。熱気の急激に強まる感覚に、戻し見た視界に映る炎王龍の姿に、思わず息を吞む。それは目の前に佇む炎王龍の全身が炎に包まれ、火だるまの様に燃え上がっているのだ。近くにいるだけで燃えて尽きてしまいそうな凄まじい熱気に、思わず距離を取ってしまったハンターを、視界の傍らで見つけた炎王龍は振り向き、見下ろす。溶岩の冷え固まった地面が広がる開けた陸地。周りには溶岩の海がどこまでも続く風景の中、全身に炎の鎧を身に付けた炎王龍の視界に捕らえてしまったハンターを、火力を更に高めた灼熱の炎が容赦なく襲い掛かる!
第3期団から寄せられた情報により調査を進めていた古龍の居場所が遂に特定された。翼竜に摑まり、この地へと降り立ったハンターは、様々な骨が散らばる開けた通り道を抜け、奥地へと進んでいく。酸の泉が自然に作られる開けた場所を抜け、腐れかけた台地の根を力強く搔き分けた先にある開けた場所へと辿り着く。そこには、様々な骨が所狭しと敷き詰められ、その中央には様々な骨が高々と積み重なった屍の山が聳え立っていた。足を踏み入れるハンターに、ギルオスの群れが騒ぎ出す。侵入者を取り囲んだ群れは、次々と飛び掛かっていく。攻撃をかわしながら、いつもより気性の荒い群れをよく見ると瘴気状態に陥っている。下手に攻撃を受け続ければ自分も瘴気状態に陥ってしまう。倒してしまうのが無難だ。そう思った時だった。周りの瘴気が急激に吸い上げられる様に聳え立つ屍の山へと集められてゆく。すると周りを取り囲む群れが急に苦しみ始め、やがて動かなくなる。まるで瘴気を吸い取られてミイラになってしまった様に…。次の瞬間、その屍の山はバラバラと音を立て、立ち上がっていく。その姿を見上げながら呆然と立ち尽くすハンターの視界に、その全貌が映し出される。表面は爛れた皮膚の様な皮に覆われ、そこからは二層に分かれた顎を覗かせ、穴の開いた翼を大きく広げる。死しても尚、生き続ける不死の怪物を思わせる様な悍ましい姿を見上げるハンターに、気付いた屍套龍は見下ろした先にいるハンターに向けて激しい咆哮を放つ!谷へと響き渡っていく程の激しい咆哮に、敷き詰められた骨達は揺れ重なり悲鳴を上げる。その咆哮をまともに受けたハンターは、鳴り響く声に意識が薄れる。叫ぶのを止め、ゆっくりと振り戻ってきた頭部は、ハンターに向き直す。ようやく薄っすらと戻ってきた意識、視界に映し出されたのは、目の前まで迫った屍套龍の二層に分かれる大顎だった!噛み砕く様に突如視界に現れた大顎に、考える間もなく嚙み飛ばされた身体は、防具を貫通してきた二層の大顎に、その身を貫かれ、激しい痛みと共に宙を舞い、落ちた先の地面で敷き詰められた骨を散らばらせながら転がってゆく。嚙み傷から流れ出る血を押さえながら立ち上がる視界の傍らに立つ巨体は、長く巨大な尻尾をハンターに向けて振り下ろす!痛みに耐えながらも、懐に向かって飛び込む様に跳躍した身体は、振り下ろされた尻尾と後ろ脚の間を潜り抜け、立ち上がった視界に佇む巨大な胴体に、構えた武器を力強く叩き上げる!だがそれは、爛れる様な皮に阻まれ、鈍い音を立て、止まる。懐からくる衝撃に、後方に跳躍した巨体は、地面に着地すると同時に前のめりに噛み付いてくる!倒れ込む様に迫る大顎に、とっさに転がった身体は、大顎は回避できたが前脚の目の前で止まってしまい、そのまま激突される様に前脚に弾き出される。巨体の範囲の広い攻撃に苦戦しながら、立ち上がった視界に屍套龍の口から勢いよく吐き出されてゆく圧縮された瘴気が襲い掛かる!為す術も無く押し流されてゆく身体は、骨の敷き詰められた地面を勢いよく転がった先で止まる。地面に手をつき、立ち上がろうとする身体を異変が襲う!全身に浴びせられた瘴気に体力が急激に奪われる。瘴気の谷。骨が敷き詰められた開けた奥地。身体を瘴気に蝕まれ、痛みに耐えながら立ち上がる視界に、周りの瘴気を勢いよく吸い上げていく屍套龍の姿が映し出される。
【モンハンワールド】ブログ小説㉑
珊瑚の並木が揺れる台地。高所の頂きから下界を見下ろす幻獣は、蒼角を掲げ、鬣をなびかせる。高所に聳え立つ険しい崖を登るハンターは、幻獣の住む頂きを目指す。崖に生える蔦を力強く摑みながら、雲を突き抜ける程高い崖を、這い上がる様に登り切った視界に、静かに佇む幻獣の姿が映し出される。一瞬の沈黙の後、武器を手に、走り出したハンターに高鳴り声を上げる幻獣。頂きで響き渡る高鳴り声は、下界へと降りてゆく。近づいて来るハンターに、勢いよく駆け出す幻獣は珊瑚の砂粒を蹴り上げながら、蒼角を突き出し、突進を始める。勢いよく正面に迫ってくる幻獣に、力強く振り切られた矛先は蒼角をかすめ、その衝撃耐えた幻獣はハンターの身体を突き飛ばす!突き上げられた身体は、後方に吹き飛び、落ちた先の地面を転がる。珊瑚の砂地に片腕を付け、立ち上がった傍らに立つ幻獣は、自分を取り囲むように落雷を落としてゆく。頭上の雲が光ると同時に落ちてくる落雷に、逃げる様に飛び込んだ身体の傍らで地面が音を立て、弾け飛んで行く。立ち上がりながら振り返り、目にした光景は、落雷が落ちたと思われる幻獣の周りに、えぐれた地面を作り出していた。いくつかの、えぐれた地面の中心に佇む幻獣は、ゆっくりと振り返り、静かにハンターを見つめる。危険を感じたハンターは、幻獣に回り込む様に走り出す!その直後、高鳴り声を上げた幻獣は、狙い落す様にハンターに向けて巨大な稲妻を落す!薄々感づいていたハンターは、光った瞬間に合わせて飛び込む様に跳躍する。倒れ込む様に地面に滑り込んだ身体の傍らに落ちてきた巨大な柱の様な稲妻は地面を爆発した様に激しく吹き飛ばし、直撃は間逃れたものの傍らに倒れ込む身体は、弾け飛ぶ珊瑚の砂粒と共に吹き飛ばされ、地面を転がる。起き上がる視界に帯電し、青白い電気を身にまとう幻獣の姿が映し出される。視界の先で佇む幻獣を中心に、周りへと伸びてゆく肉眼でも確認できる程の青白い電気の帯に、ハンターの脳裏にあの時の光景が蘇り、思わず息を吞む。珊瑚の並木が揺れる高所。雲海を見渡せる頂きで、伸びてくる青白い電気の帯は、ついにハンターの脚元へ到達する。
古龍の代表的な存在とも言える鋼龍は、行動範囲が広く各地で目撃されている。調査を進める内、この新大陸でも痕跡が見つかり、遂に居場所を特定する事が出来た。翼竜に摑まりこの地に降り立ったハンターは、溶岩の冷え固まった地面を駆け抜け、高所を目指す。噴煙上がる大空を見渡せる開けた高所。溶岩の冷え固まった地面から無数の小さな結晶が連なり生える。溶岩の冷え固まった地面から生える小さな結晶を踏み歩く四つ脚は、ゆっくりと巨体を揺らしながら散歩をする。頑丈な鋼に包まれた大きな身体からしかやかな尻尾を生やし、胴体から生える巨大な翼は、羽ばたく度に強風を発生させる。その地に足を踏み入れたハンターの視界の先で、見上げる程長い首の先に付く頭部から青い瞳が見下ろす。立ちはだかる視界の先の強敵に走り出したハンターに、古龍の咆哮が大空を駆け巡る。ビリビリと伝わってくる咆哮を肌で感じながらも、怯む事無く結晶の生える地面を駆けていく。叫び終わり、振り向き直す頭部の傍らまで辿り着いたハンターは、鋼の頭部に向けて、構えた武器を勢いよく振り下ろす!だがそれは、鋭く睨んだ様に見えた瞳に、矛先が振り下ろされる直前で蛇行する様に動いた巨体の前脚に阻まれ、突き飛ばされたハンターは転がった地面に脚具を突き立て、滑り止める様に受け身を取り、立ち上がる。衝撃は少なかったとはいえ、巨体に似合わない俊敏な動きは厄介だ。再び走り出そうとする視界に、鋼龍の大きく開いた口から勢いよく放たれた圧縮された空気の塊は地面の結晶を弾き飛ばしながら、ハンターへと勢いよく飛んでくる!直線的に放たれた空気弾に、真横に転がりかわした身体の傍らを、空気の塊は勢いよく通り過ぎてゆく。だが、空気の塊にまとわりつく風の勢いは、強風にも匹敵する程強く、いきなり吹き荒れる強風に屈み、身動きが取れなくなってしまったハンター目掛けて勢いよく飛び掛かる鋼の牙は、その身体を噛み付き飛ばす!無防備な身体を守る防具を貫き、身体に突き刺さる鋼の牙。飛び掛かってきた勢いで空中に弾き飛ばされた身体は、落ちた地面の結晶を砕き、砕け散った結晶の欠片は勢いよく飛び散り防具の隙間から入り込むと身体に突き刺さり、転がる。嚙み傷と、結晶の刺さる痛みに耐えながら、立ち上がるハンター。視界を戻すと傍らに立っていた鋼龍が横目で見下ろす。振り向きざまに薙ぎ払う様に口から放たれた圧縮された空気に、逃げる間もなく捕まったハンターの身体は、大きくのけ反る様に尻餅を付いてしまう。その姿を見下ろす鋼龍は、翼を大きく広げ、風がその翼をなびかせてゆく。ハンターは、見上げるその姿に風を操っている様な感覚を思わせられていた。次の瞬間、大地を力強く蹴り、跳躍した巨体は風を巻き上げる様に回転しながら大空へと舞い上げる。それに寄り添うように力強く回転しながら巻き上げられた風は、一瞬にして巨大な竜巻へと姿を変える。突如、目の前で起った天災に、為す術も無く呑み込まれてゆくハンターに、巻き上げられてゆく岩や結晶がぶち当たる。油断すれば自分も一瞬で吹き飛ばされてしまう状況に、必死になって地面にしがみ付く。無数の小さな結晶が連なり生える高所。突如襲い掛かってきた天災に呑み込まれ、眼も開けられない程に吹き荒れる巨大な竜巻の中で必死になって地面にしがみ付くハンターを、大空へと舞い上がった鋼龍は、鋭く睨み、急降下する!
【モンハンワールド】ブログ小説⑳
新大陸に渡り、調査を進めていた古龍の居場所がついに判明する。生態研究所を後にしたハンターは、翼竜に摑まり、結晶の連なる大地へと降り立つ。見上げると、噴煙の上がる空が広がる開けた場所に、大きく口を開ける暗がりの入り口。奥へ進むと一面を結晶が覆う開けた場所へと辿り着く。凹凸の激しい地形には、針の様に鋭く尖る結晶が連なり生え揃う。視界の先で聴こえてくる物音に目を向けると、暗がりから白く染める鋭く長い棘を、全身に生やす巨体が、近づいて来る。それは、熔山龍との闘いで現れた、あの古龍だった。武器を構えるハンターに、向き合った滅尽龍は激しい咆哮を上げる!その咆哮は、一面に生え揃う結晶を震わせ、響き渡る雄叫びを肌で感じながら、武器を握り締め、走り出す!凹凸のある地面を越え、駆けて抜けて来るハンターに、力強い四つ脚は簡単に詰め寄り、前脚で地面を削り、勢いよく引っ搔き上げる!とっさに真横に転がり、寸前でかわしたハンターの傍らを大爪が通り過ぎ、砕き飛ばされた地面の欠片が、腕具をかすめ、通り過ぎてゆく。あの大爪をまともに受け、引き裂かれれば、ただでは済まされないだろう。前脚の外側に転がり立ったハンターは、そこから見える脇腹に向けて矛先を力強く振り切る!次の瞬間、脇腹の目の前に折り畳まれた翼は地面に付けられ、滅尽龍は内側から翼を力強く押し付けながら近づく。内側から押し付けられた鋭い棘が立ち並ぶ翼は、溶岩が冷え固まって作られた地面をいとも簡単に磨り潰す様に、勢いよく押し迫る!それはまるで、剣山の壁が勢いよく迫ってくる様な感覚に捕らわれてしまう。次の瞬間、目の前から迫ってくる白く染まる剣山に、その身を貫かれ、力強く押し上げられた身体は、宙を舞い、防具を貫通して来た無数の棘に全身を串刺しにされた様な激痛が走り、押し飛ばされた先の地面を転がる。全身を流れ出る血と貫かれた痛みに耐え、よろけながらも立ち上がろうとする身体に、力強く駆け寄って来た滅尽龍は、強靭な前脚を振り上げると見下ろした視界に映るハンター目掛けて、前脚を勢いよく振り下ろす!見上げる先の光景に、傷付いた全身に力を込めて、振り絞る様に転がった傍らに、振り下ろされた強靭な前脚は、地面を粉々にする破壊力を見せつけ、叩き付けられた衝撃で前脚に生える無数の棘が一瞬にして弾け飛ぶ!勢いよく弾け飛んだ無数の棘は傍らに転がった身体に突き刺さる!突き刺さる棘を抜いた傷口から血が滴り落ち、更に増す痛みに耐える呼吸は荒くなっていく。破壊力と隙のない攻撃に追い詰められていくハンター。回避したところを攻撃され、攻撃するにも凹凸の地形に慣れている滅尽龍に分がある。全身に傷を負い絶望的な状況で、ある考えが頭をよぎる。それは危険な賭けだが、この状況では他に方法がない。闇雲に動き回っても倒されるのは時間の問題だ。覚悟を決めたハンターに、トドメを刺しに来た強靭な前脚が勢いよく振り下ろされる!その姿に対し、懐に飛び込む様に跳躍した身体は脇腹と後ろ脚の間を飛び抜け地面に転がる。後方に転がり抜けた身体を叩きつける様に強靭な尻尾が勢いよく振り下ろされる!頭上から降りてくる尻尾を、転がった身体は寸前でかわし、走り抜けた先にある坂を駆け上がり、身体を翻すと、武器を握り締め、勢いよく滑り降りていく。振り返り、滑り降りてくるハンターに狙いを付けた滅尽龍は、振り上げた強靭な前脚を勢いよく振り下ろす!振り下ろされる強靭な前脚を目に、力強く跳躍し、丸めた身体は空中で回転を始め、その外側に構えた武器は勢いよく大回転する!地面に叩き付けられた強靭な前脚から放たれた無数の棘がハンターに襲い掛かる!だが、高速回転する武器の矛先が無数の棘を弾き飛ばしてゆく!棘の嵐を通り過ぎた先に巨大な二つの角が現れる。高速回転する武器の矛先は巨大な角に幾度となく連撃を繰り出していく!ハンターの思いついた考えは、攻撃と防御を同時に行える、この捨て身の策だった。その凄まじい衝撃に、唸り声を上げる滅尽龍の巨大な片角は砕き飛ばされ、受け身を取り、傍らに着地したハンターは、傷口をかばいながら見上げた視界に立ちはだかる滅尽龍の姿に驚かされ、思わず息を吞む。そこには、全身に生える白い棘を、黒々と染め、棘を更に鋭く長く尖らせた滅尽龍の姿があった。向き合った滅尽龍は激しい咆哮を上げると、翼を大きく広げ、力強く跳躍した巨体は空高く舞い上がり、黒々とした剣山の塊は、全てを呑み込む様に急降下する!咆哮に怯む身体は、必死で意識を集中させ、覆いかぶさってくる巨大な剣山を前に、振り絞る様に跳躍し、前のめりに倒れ込む形で飛び込んだ身体は、剣山の塊を寸前でかわし、すぐ後ろで、爆発が起きたかの様な轟音が走り、辺り一面に飛び散る地面の先で結晶の壁が粉々に砕かれ、破片が広範囲に飛び散ってゆく。轟音と共に勢いよく飛び散ってくる破片を這いつくばる様に凌いだハンターは、振り返った先に広がる恐ろしい光景に目の当たりにする。溶岩が冷え固まった地面は、辺り一面を激しくえぐられ、その上を砕け散った結晶が敷き詰められた様に散らばり、結晶の壁が粉々に砕かれた先に出来上がった大穴は砂煙に覆われ、煙幕が立ち込めたように暗がりを覆う。晴れてくる砂煙の中からゆっくりと姿を現す巨大な黒い影は、暗がりから勢いよく飛び出してくる!一面を覆う美しい結晶が瓦礫と化した、凹凸の地形が広がる開けた場所。暗がりから顔を出す巨体に、傷を負うハンターは、武器を握り締め、また走り出す!
荒地の砂漠。下層に広がる洞窟内の砂漠の奥には、砂が滝の様に流れる落ちてゆく光景が周りを包み込む開けた砂地がある。そこへ続く一本の坂道を下ってゆくハンターは、降り立った先に立つ、全身を真っ黒に染める角竜を視界に捕らえ、向き合った角竜は激しい咆哮を上げる!その激しい咆哮は洞窟内に響き渡り、砂の滝が揺れ動く。大地の揺れ動く咆哮を肌に感じながら、角竜に向かって走り出すハンターを、視界に捕らえる角竜は、黒々とした巨大な二本角を掲げ、勢いよく突進していく。迫ってくる正面からの突進に真横に転がったハンターに合わせ、湾曲する様に曲がってきた突進は、地面に転がった身体を砂ごと、すくい上げる様に勢いよく突き飛ばす!二本の巨角をまともに受けた身体は、激痛と共に突き飛ばされた先で、砂を舞い上げながら地面を転がる。勢いを殺す事無く向きを変えながら突っ込んできた突進に驚かされながら、激痛に耐え、立ち上がろうとする傍らに手を付き、冷や汗が出る。手を付いた傍らには砂の滝が流れ、横目で覗いた滝壺は確認できず、砂が暗闇に無限に呑み込まれてゆく。転がり止まるのがあと一歩遅ければ、底なしの闇の中へ引きずり込まれ、命は無かっただろう。自然に出来た奈落へ通じる落とし穴に、思わず息を吞む。気を取り直し、立ち上がり戻した視界に、取り囲むように力強く歩く巨体は、ハンターを見下ろしながら狙いを付ける。次の瞬間、勢いよく突き出された二本の巨角に、とっさに転がった身体は、突き上げる様に振り上げられた巨角を寸前でかわし、懐に潜り込んだハンターは、目の前にある柔らかい腹部に武器の矛先を振り切る!だがそれは、鈍い音を立て、叩き抜けた矛先は地面に沈む。その一部始終を目の前で見たハンターは、汗をにじませる。腹部に放たれた一撃は、突き振り上げられた巨角の、前に進もうとする勢いを押し殺し、真逆の後方に力強く跳躍し、後方に着地した身体の頭部に掲げられた頑丈な巨角に命中した為だった。俊敏性と破壊力を兼ね揃えた亜種は、原種の角竜をはるかに上回る事に気付かされ、恐怖する。弾かれはしなかったものの、また目の前に掲げられた巨角は勢いよく突進を始める!真横に転がり寸前でかわした身体の傍らを、砂の滝に吸い込まれる様に、勢いよく飛び込んで行った角竜を横目で捕らえたハンターは、飛び込んで行った砂の滝に気を配りながら、後ずさる。だが、滝の後ろからハンターを捕らえる瞳は、背後に狙いを付ける。荒地の下層に広がる砂漠。砂が滝のように流れ落ちる開けた砂地。ハンターの警戒するのとは真逆の砂の滝から、勢いよく飛び出してきた二本の巨角は、背後を狙って襲い掛かる!