『サトシには貸さない様に姉ちゃんに言っておくから 俺ん家へ来ても無駄だからな!』研究所の外へ出た少年の脳裏に、先程の嫌味ったらしい言葉が甦ってきた。だが、地図があるのと無いのとでは大違いだ。この先、旅をするのにタウンマップは必要になってくる事だろう。アイツにはダメ押しされていたが、幼馴染の家を訪れた少年は、玄関のドアをノックする。「はーい」中から声が聞こえ、ドアが開かれる。中から出てきたのは幼馴染のお姉さんだった。少年も、この人に会うのは久しぶりだった。幼馴染の家庭は、シゲル、お姉さん、オーキド博士の三人で暮らしている。こちらも相当複雑な家庭の様だ。久しぶりに見る少年に、微笑んだお姉さんは、「オーキドの お爺ちゃん お仕事頼んだんだって?」と問を掛けてきた。その言葉を聞き、やはりアイツの手が回っていた事に気付いた少年は、「一足遅かったか…」と思うが、先に研究所から出て行ったシゲルからすれば当然の事だ。「大変ねー」他人事の様に話すお姉さんは、何かを取り出し、持ってくる。「これ あげるから使って!」手渡された物を見て驚く!それは、シゲルから貸さない様にとダメ押しされたであろうタウンマップだった。「貸さぬ様言われたはずのタウンマップを?しかもタダでくれるだと!?」手にした思いがけない物を見て驚き、向き直した少年の目に微笑むお姉さんが映る。「自分のいる場所や街の名前が知りたい時 タウンマップ 使うといいわよ」と少年に使い方を教え、優しく微笑んだお姉さん。あの嫌味ったらしい弟とは大違いのお姉さんの慈悲深さに感服致した少年は、感謝のお辞儀をすると、幼馴染の家を後にする。マサラタウンから北に位置するトキワシティへ、もう一度向かうため歩き出した少年は、ある事に気が付く。それは、旅をする事をまだ母親に伝えていないという事だった。それに気付いた少年は、ポケモンを貰ったあの日から帰っていない自宅のドアを開ける。中に入ると、椅子に座る母親は、ブラウン管テレビに映る午後のワイドショーを今日も眺めている。いつもと変わらない光景に少年は、呆気に捕らわれるが、内心ホッとしていた。「サトシ……! 少し休んで行ったら どうかしら……?」帰ってきた息子に気付いた母親は、あまり多くは語らず、そう問い掛けてきた。静かに頷いた少年は、二階の自分の部屋で横になる。少し休むと一階へ降りてきた息子の顔を見て、微笑む母親は、「あらあら! あなたもポケモンも元気いっぱいね! それじゃ 気を付けて! 行ってらっしゃい!」と快く送り出す。ポケモンを貰った事も、これから旅に出る事も伝えていないのに、その全てを理解した上で送り出す様な言葉。「何も言わずとも全てを理解する常識を超えた現象!…もしや!悟りを開き、神の領域に達したというのか!?」ブラウン管テレビから聞こえてくる午後のワイドショーのBGMを背中で感じながら、玄関のドアを開ける少年は、振り返らずに、自宅を後にする。トキワシティへ向かう途中、見覚えのある後ろ姿を目撃する。その胡散臭い後ろ姿は、マサラタウンを旅立ったあの日、少年の脳裏に焼き付いた物と全く同じ姿だった。その立ち並ぶ木々に顔を付け、通路側に立つ少年に背を向けて立っている人物、恐らくマサラから来る初心者トレーナーを待ち伏せているのだろうが、今の所マサラから旅立つトレーナーは自分とアイツ以外にいない。この先、需要は見込めないだろう。店長も見切りを付けて引き揚げさせた方が良い。そんな事を考えながらも、他人事に首を突っ込まない少年は、声を掛ける事無く街を目指す。トキワシティに戻ってきた少年は、少ない小遣いをほぼ全額ぶち込み、モンスターボールをまとめ買いすると、フレンドリィショップから出てくる。草むらでサクッとコラッタとポッポをゲットした少年は、まだ進んだ事の無い新天地。タウンマップで調べるとトキワシティから西へ伸びる通路、22番道路に来ていた。生い茂る草むらから飛び出してくるポケモンに育ち盛りのヒトカゲが、次々とワンパンを決めていく。この爽快感に酔いしれる少年は、ちゃっかり毒針ポケモンのニドランの♂♀ペアもゲットし、絶好調だった。「この辺りで我に敵う者はいない!」優越感に浸りながらニヤ付き顔が止まらない少年は、更なる高みを目指し、歩みを進める事にする。タウンマップを開くと、この先を進めばチャンピオンロードとかいうロードが書いてあった。「この先を進めばチャンピオンが自分を待っているのか!」そう思う少年は、ヒトカゲがチャンピオンのポケモン達をワンパンしていく姿を思い浮かべ、その更にニヤ付く顔は傍から見れば、もはや変人の域だ。その表情を維持したまま歩いた先、「あーッ!サトシ!」自分を呼びかける聞き慣れた声に歩みが止まる。ふと我に返り、戻された現実の視界に、いきなり目の前に現れるライバルに驚き、「うわっ!」と、叫び声が出てしまいそうな口を寸前で閉じ、声を呑み込む。「何やってんだコイツ?」と言わんばかりの馬鹿にした様な表情を浮かべるライバルに必死で平然な表情を作る。「ポケモンリーグに行くのか?」突然の的を射た問い掛けに、「どうしてそれを!?顔に出ていたのか!?」平然を装う事が出来ないほどの驚きと疑問は、遂にその表情に現れてしまう。その図星の表情を見たライバルは、鼻で笑うと、いつも通りのキザな笑いを浮かべ、「やめとけ! お前どうせバッジ持ってねーだろ?」と言い放つ。「バッジ?何を言っているんだコイツは」さっぱり分からない問い掛けに少年は、困惑する。「見張りの おっさんが通してくれねーよ!」その言葉を聞き、目の前にいるコイツは追い返されて来たと気付いた少年は、いつも馬鹿にされてる仕返しに、小馬鹿にする様に心の中で笑った。「……それよりさあ!お前のポケモン 少しは強くなったかよ?」開き直り、話題を変えたライバルは、相変わらずのキザな態度で、勢いよくポケモンを繰り出してきた!またコイツの我がままで仕掛けられたバトルだったが、鍛えられたヒトカゲを戦わせたくてウズウズしていた少年は、俄然やる気に満ち溢れ、腰に掛けていたモンスターボールを掴み取り、構える。「丁度いい、チャンピオンをぶっ倒す前の肩慣らしだ!!」そう心の中で思った少年は、自信に満ち溢れ、力強く見開かれた眼力の下で口元が不敵な笑みを浮かべる。「ゆけっ!ヒトカゲ!」決めゼリフと共に勢いよくポケモンが飛び出す!草むらで鍛えられたヒトカゲの前に、立ちはだかるライバルのポケモンは、あの戦い慣れた一般的な小鳥ポケモンのポッポだった。だが、野生で見るのとは違い、隙の少ない立ち振る舞いに対し相手の裏をかくには、新しく覚えたこの技しかなかった!「ひのこだ!」少年の掛け声と共に、狙いを付けたヒトカゲの口から勢いよく放たれた【ひのこ】は、さっきまでのキザなニヤ付き顔が驚きと焦りに変わるライバルのポッポに力強く飛んで行く!「かわせ!」一瞬遅れて掛けられた声に動き出そうとする間もなく【ひのこ】に呑み込まれたポッポは、身体に付く炎を振り払うが、それでも身体にかなりのダメージを受けてしまい、動きが鈍る。これは、チャンスだ!少年の掛け声で素早く駆けだしたヒトカゲは、一気に距離を詰め、鋭い爪を剥き出しにし、ポッポの身体に襲い掛かる!「今だ!」その掛け声を聞き、ヒトカゲをギリギリまで引き付けたポッポの鉤爪で巻き上げられた地面の砂は、勢いよくヒトカゲの瞳に命中する!目に入ってた砂で、狙いが定まらなくなったヒトカゲの【ひっかく】攻撃は、動きの鈍ったポッポにも簡単にかわされてしまう。「かぜおこし!」ライバルの掛け声で、ポッポの傍らで体勢を崩すヒトカゲに、近距離からの繰り返し羽ばたかれた風の渦が勢いよく襲い掛かる!「かわせ!」背後から聞こえる少年の叫び声に動き出そうとする身体は、勢いよく渦巻く風の流れに逆らえず、為す術なく呑み込まれ、弾き飛ばされる!「ヒトカゲ!」飛ばされた先の地面で転がり、起き上がるヒトカゲに少年が呼び掛ける。見たところ、あまりダメージは受けていないようだが、やはり目は開き辛い様だ。「かぜおこし!」ライバルの掛け声と共に、畳み掛ける様に勢いよく羽ばたかれた風の渦が急速に迫ってくる!普段のヒトカゲなら、かわす事も出来るはずだが、視界を狭まれたこの状況では回避する事は難しいだろう。「どうする!?」額に汗を滲ませる少年は【かぜおこし】が命中するまでの数秒間で考えを巡らせる。そうだ!と、とっさに思い付いた策に少年は賭け、口元が動く。「風が向かってくる方向に、真っ直ぐ全力で、ひのこだ!」その少年の掛け声に、視界を狭まれたヒトカゲは身体を通り過ぎてゆく風の流れに向き直すと身体を仰け反らせ、腹の底から勢いよく【ひのこ】を吐き出す!力強く吐き出された【ひのこ】は、直撃寸前まで近付いていた【かぜおこし】とぶつかると、それを風船を割る様に、いとも簡単にかき消し、風の流れは分散し、周りに散る。風の渦をかき消した、火球の様に勢いよく真っ直ぐに飛んで行く【ひのこ】の向かう先には、ポッポが地面の砂埃を舞い上げながら翼を羽ばたかせ、風を送っている。少年が思った通り、放たれた【かぜおこし】の直線上には、やはりライバルのポッポがいた。まさかの、風の渦を貫通して飛んでくる火球、思ってもいなかった事態にライバルの指示が遅れる「かわせ!」叫び声を上げるが、手遅れだ。勢いよく真っ直ぐに向かってきた火球の様な【ひのこ】がポッポの身体に直撃する!燃え盛る【ひのこ】に包まれ、弾き飛ばされたポッポは、飛ばされた先の地面で転がり、目を回し倒れる。少し悔しそうな表情に変わったライバルは、ポッポをモンスターボールに戻すと次のポケモンを繰り出してきた!そのポケモンは少年も知っている、あのポケモンだった。全身を青く染め、硬い甲羅で身を守る亀の子ポケモン。このポケモンを見るのは、博士から初めてポケモンを貰ったあの日以来だ。一瞬ニヤ付いた様に見えたライバルの口元が動く。「ゼニガメ!あわだ!」その掛け声に、構えたゼニガメの口からシャボン玉の様に無数に吐き出された【あわ】は、ヒトカゲの身体をゆっくりと包み込む。「何だ?この技は、これがゼニガメの新しい技なのか」と、どう見ても普通の泡にしか見えない少年は、「泡風呂みたいだ」と、呆れた様な表情でヒトカゲに向き直す。だが、そこには苦しそうに【あわ】に耐えるヒトカゲの姿があった。ほのおタイプのヒトカゲにとって、みずタイプの技【あわ】は弱点に当たる。その事を思い出した少年の表情は焦りを浮かべる。油断していた間に周りを【あわ】が埋め尽くしてしまっていたのだ。「すなかけで視界を奪い、あわで取り囲み継続的にダメージを与える作戦か!」と気付くが、もう遅い。威力は低そうだが、ヒトカゲにとっては苦しい状況だ。「どうする!?」焦る気持ちに額にかく汗が流れ落ちてくる。指示を出そうにも視界の狭められたヒトカゲを【あわ】の届かない所まで誘導するのは難しい。まずは、これをどうにかするしか…「!」ここで、ある考えが閃き、少年の口元が動く。「あわに顔を付けろ!」意味の分からない発言に、ライバルは馬鹿にした様に首を傾げる。「血迷ったか?」呆れるライバルの視界の先で、指示通りに苦手な【あわ】に顔を付けるヒトカゲ。それを確認した少年は更に指示する「目を開き、砂を洗い流せ!」その発言を聞き、ハッ!としたライバル。「させるな!たいあたりだ!」その傍らで立ち、【あわ】を吐き出し続けていたゼニガメは、口を閉じると駆け出し、地面に無数に吐き出された【あわ】に甲羅の腹側で滑り込む様に勢いよく飛び込むと、割れ出した【あわ】の地面に残る水気を利用し、一気に滑り抜けて行く!「この時を待っていた!」急速に近付い来る、真っ直ぐに地面を滑る甲羅の音、視界が狭まれた状態のヒトカゲでも攻撃を当てる事は容易い。「近付いて来る音に耳を傾けろ!」その言葉を聞き、囲まれた【あわ】の中で静かに力を溜める様に構えを取るヒトカゲは、鋭い爪を剥き出しにする。「駄目だ!引き返せ!」今から起ころうとしている状況に気付き、声を荒げたライバルだったが、勢い付いた加速する甲羅をゼニガメは止められない。「今だっ!ひっかく攻撃っ!」少年の掛け声と共に放たれた力強い【ひっかく】は、急速に近付いて来た青い甲羅にカウンターを喰らわす様に豪快な一撃を浴びせる!抜群のタイミングで引き裂かれた甲羅は、まるでホームランを打たれた様な凄まじい勢いで、後方に弾き飛ばされた先で、木にぶつかり、落ちた地面で回転する。「ゼニガメ!」呼び掛けるライバルの声に、甲羅から顔を出したゼニガメは、残り僅かな力を振り絞り、立ち上がろうとする。あの凄まじい攻撃に対し、とっさに甲羅に身を隠したゼニガメの判断は正しかった。生身に当たっていれば、即戦闘不能になっていただろう。少年は、ヒトカゲに向き直すと、そこには目に入った砂が取れたであろうヒトカゲの瞳と目が合う。静かに頷いた少年は、自信満々に言い放つ。「畳み掛けろっ!ひっかく攻撃だっ!」その掛け声を聞き、ゼニガメの滑って出来た【あわ】の無い直線の道をヒトカゲは駆け抜けてゆく。ゼニガメとの開戦時から、足にまとわり付いた【あわ】に速度を下げられるも、鍛えられたヒトカゲの取っても余りある素早さに、ゼニガメとの距離は見る見るうちに縮まってゆく。やっとの思いで立ち上がったゼニガメの視界に、鋭い爪が襲い掛かる!「あわだっ!」ライバルの掛け声に、口から吐き出された無数の【あわ】が鋭い爪に、先に吐き出された方から順番に勢いよく割られてゆく!次々と割られる【あわ】、遂にゼニガメの顔が姿を現す!「決めろっ!」後ろから聞こえる少年の掛け声に、力を込めたヒトカゲの【ひっかく】が頭部を捕らえる!その衝撃で地面を転がったゼニガメは目を回し、倒れる。「あーッ!」叫び声を上げ、ゼニガメに駆け寄ってきたライバルは無事を確認するとモンスターボールに戻す。「こいつ舐めたマネを!」思った事を直ぐ口に出すライバルは、言葉にすると同時に、不機嫌そうな顔で、こちらを見てくる。その後、近付き、拳が突き出される!少年は「憂さ晴らしに殴られるのか!?」と思い、身構える。が、その拳は少年に当たる前に止まり、そこで開かれ、握り拳の中からアレが出てきた。少年は、賞金として280円手に入れた!見掛けによらず意外と律儀なヤツだ。この世界では負けた方が勝った方に賞金を渡す。そういうルールになっている…らしい。「どうやらポケモンリーグには 強くて凄いトレーナーがウジャウジャいるらしいぜ」さっきまでの不機嫌な態度から一変し、開き直った様に、話題を変えて話し出すライバルに、少年は、一瞬驚かされる。嫌味なヤツだが、そういう後腐れの無い所は立派だ。「どうにか あそこを通り抜ける 方法を考えなきゃな!お前も いつまでも ここらに いないで とっとと先に進めよ!」と勝負に負けた事も忘れたのかと思うほどに、キザなニヤ付き顔を満面に浮かべたライバルは、去り際にまたキザなピースを投げ、その後ろ姿は見えなくなった。勝負には勝ったが、少年は、少し苛つく。ライバルには念押しされたが、ポケモンリーグ側に歩みを進め出した少年に、看板が見えてくる。『ここはポケモンリーグ正面ゲート』立ち並ぶ柵の間にある看板から見上げると、そこには巨大な建物が聳え立っていた。近くまで来ると、その巨大さが、更に際立ち、城壁の様に聳え立っている。ウィーン…の割に意外と小さめの取り付けられた自動ドアが音を立て、開く。中に入ると、開けたフロアに一直線に絨毯が敷かれ、その先に大きな扉、その傍らに立つ一人の男、絨毯の四隅にはポケモンを象った、大きな銅像が飾られている。堂々と絨毯を歩いてきた少年が大きな扉の前まで来ると、傍らに立つ男が、遂に話し掛けてきた。「ここから先は本当に強いポケモントレーナーだけ通れます」警備員の様な格好の胡散臭そうな男は、そう語り掛けてくる。恐らく警備員だろう。「あなたは まだグレーバッジを持ってませんね!」その吐き出された言葉と同時に効果音が鳴り響く!「ぶっぶーーッ!」突然の出来事に、ビクッ!と動いた、驚く少年の目が見開く!「何だ!?今の効果音は!!」そう思った少年は、周囲を確認するが効果音が鳴りそうな物は見当たらない。「って事は、傍らに立つ、このおっさんが腹話術の原理で効果音に似た声を発したって事か!!」そう結論に至り、改めて警備員に向き直す。「…だとすれば相当クレイジーな奴だ!」考えを巡らせていた少年の額から冷や汗が流れ落ちる。「決まりですから通す訳には いきません!」真面目そうに言い放たれた一言に、あの言葉を思い出す。『見張りの おっさんが通してくれねーよ!』ライバルが言っていた言葉を思い返し、少年は、気付かされる。「見張りの、おっさんとはコイツの事か!」だが、分かったところで、どうという事は無い。「あっ!UFO!とか言って、注意が逸れるた隙に扉を開き中に入る。だが、腹話術で効果音を出してくる様なクレイジーな奴に、そんな子供だましが通用するか?答えは限りなくNOだ!そもそも、あの扉には鍵が掛けてあるんじゃないのか?…」考えを巡らせていた少年は、ふと我に返る「アホ臭っ!」馬鹿馬鹿しい考えを巡らせていた自分に、恥ずかしさが押し寄せてきた少年は、帽子を深々と被り、警備員に背を向け、歩き出す。「チャンピオン!命拾いしたな!」とかいう恥ずかしい捨て台詞を吐く事もなく引き返した先の自動ドアが開き、外へ出た少年の見上げた視界に、どこまでも続く青空が広がっていた。